G8サミットを終えて帰国した野田首相は、強気で後半国会に当たろうとしている。野党が要求する問責2閣僚の交代を拒否、ほとんどの委員会は機能停止に陥っている国会については、自ら野党・自民党の谷垣総裁と再会談する道も閉ざした。
何が首相を強気に駆り立ているのだろうか。
消費増税法案に反対の主張を崩していない小沢一郎元代表との会談がいわれている。民主党内には野田氏が小沢氏と妥協して、先行きの見えない消費増税法案の成立は先送りし、今国会の会期延長せずに会期を閉じるという観測が広がっている。輿石幹事長が模索している法案の”継続審議”論だ。
この空気は自民党にも伝わり、石原幹事長は「消費税関連法案の採決を先送りすれば、即座に内閣不信任決議案や首相問責決議案を提出する」と対決路線を鮮明にしている。
内閣不信任決議案が衆院で可決される可能性は薄いが、参院の首相問責決議案が野党多数で可決される公算が強い。しかし首相問責決議案を可決すれば、自民党は問責した首相が率いる内閣が出席する国会審議には応じられないことになる。
消費増税法案を民主党と自民党の協調によって成立させる路線は、まさに風前のともしび。野田・小沢会談でどのような道筋がみえてくるか、民主党だけでなく自民党など野党も注目している。
<野田佳彦首相は20日、参院で問責決議を受けた田中直紀防衛相と前田武志国土交通相について「2人には緊張感を持って職務を果たしてほしい」と述べ、野党が求める交代に応じない考えを重ねて表明。民主党の輿石東幹事長ら党執行部の刷新もきっぱり否定した。先月20日の問責決議から1カ月、衆院社会保障・税一体改革特別委員会など一部を除き、国会はほぼ機能停止に陥っている。(ワシントン 半沢尚久、酒井充)
「社会保障と税の一体改革関連法案を含め重要法案審議に影響が出るのはマイナスではないか。ねじれ国会なので国会の在り方を含め議論できればいい」
首相は19日夜(日本時間20日午前)、米ワシントン近郊のダレス国際空港で記者団の質問に応じ、国会停滞の責任を野党になすりつけた。輿石氏が来年夏の衆参同日選に言及したことについては「齟齬(そご)のある発言はない」とかばい「やり抜かなければならないことをやり抜いた暁にしかるべき時に民意を問うと申し上げている」と開き直った。
サミットで各国首脳と比肩すると気分が高揚し、強気になるといわれるが、内閣支持率は2割台に落ち込み、もはや自民党にすり寄るしか政権を維持するすべがないことはすっかりお忘れのようだ。
一連の発言により自民党は態度を硬化させ、21日からの特別委審議での追及が厳しくなるのは確実だ。そもそも4月20日の問責決議後、日祝日を除く17日間で本会議や委員会が開かれたのは衆参それぞれ7日間だけ。自民党が例外扱いする一体改革に絡む衆院本会議と特別委を除けばほとんどの委員会は機能停止に陥っている。
政府は今国会に81本の新規法案を提出しているが、成立したのは20本だけで成立率24.6%。通常国会として戦後最低だった平成22年(鳩山・菅政権)の54.7%を大きく下回る公算が大きい。自民党政権では80~100%の成立率が常識だったことを考えると「グズぶり」は際立っている。
だが、民主党に危機感は薄い。城島光力国対委員長は「国会の停滞は政治家全体の責任だ」、樽床伸二幹事長代行は「野党は当事者能力を欠いている」と責任感のかけらもない。
自民党の岸田文雄国対委員長は「与党なら何らかの提案を行うのが当たり前なのに全くそういう姿勢がみられない。この状態をずっと続けるつもりなのか」とあきれるが、首相の開き直りは別の疑念を抱かせる。
近く行われる民主党の小沢一郎元代表との会談で消費税増税法案の先送りで合意するのではないか。輿石氏はもともとこの考えだったとされるだけに可能性は十分ある。
「首相は消費税法案に『政治生命を懸ける』と言った。小沢さんと会い『党分裂は良くないから民主党代表選の後の秋の臨時国会でやろう』となったら野田内閣は持たない!」
自民党の石原伸晃幹事長は20日、北海道旭川市で講演し、「それならば野党として重大な決意で対処しなければならない」と断じた。つまり消費税関連法案の採決を先送りすれば、即座に内閣不信任決議案や首相問責決議案を提出するというわけだ。消費税をめぐる「民自協調」は風前のともしびとなりつつある。(産経)>
杜父魚文庫
9740 強気一点張りの首相が打つ手は 古沢襄

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