このところの野田首相の言動を分析すると、消費税率引き上げ法案の今国会での成立は見送り、小沢氏との関係を修復した上で、9月に党代表の再選に全力を挙げると決断したのではないか。
マスコミはそれに気づかないで報道しないのか、引き上げに命を掛けるといった首相の気迫に、まだ、騙されているのいずれかだ。昔の島ゲジ流に「色眼鏡」で首相の言動を分析すると、首相は引き上げ法案よりも再選に舵を切り替えたとしか思えない。
まず、自民党など野党各党との協力路線を自ら封じてしまった。問責決議案が可決されてしまった田中防衛大臣ら2閣僚の罷免要求を断然、拒絶した。
ワシントンでこの発言をマスコミは G8参加で気分が高揚していたからと論じたが、違うだろう。仮令、高揚したって政局運営には一文の価値もない。
2閣僚を推薦した輿石幹事長のカオを立てたのである。部下たる輿石などのカオを何故立てる必要があるのか。それは当面の政局運営の主導権を輿石に渡すという意味である。
輿石が考えは、幹事長兼参院民主党議員会長と言う今の権力を保持することにしかない。このために引き上げ法案などで身を崩すことなど絶対に考えていない。与党少数の参議院で民主党勢力を束ねて行くという快感は味わることのない衆院議員には理解不能の境地である。
昔、自民党時代の参議院は「重宗雄三議長の不可侵地」といわれた時代があった。今は輿石の不可侵地が参院なのでる。
良く考えてみれば、この9月に小沢自身が代表選挙に出馬することは、例の「控訴」で不可能になった。小沢としてはチルドレンを束ねて「圧力」の維持を図るのが精一杯。
そこらを読んで輿石はかねてから消費税率引き上げ法案の「継続審議」を画策してきた。そこで、2閣僚の罷免に抵抗すれば、法案成立の唯一のカギにつながる野党との話し合い路線が断絶する。
その上で野田・小沢直接会談に持っていけば、二人が口にしなくても「法案の今国会見送り」が暗黙のうちに合意され、ひいては野田の党代表再選もおのずとかたまるというもの。つまりこれぞ「党内融和」となり輿石自らの地位も安泰というものだ。
野田はワシントン出発前のわずか30分間の輿石との会談でこのシナリオを聞かされ、膝をうってワシントン入りしたのである。同行記者団に「高揚」と見えたのは党代表再選決定による高揚だったのである。
敷衍すれば、衆院解散は遠のき、自民党での谷垣降しが激化するだろう。実は政局の目は民主党からいつの間にか自民党に移動していたのだ。輿石はただの日教組ではない、大変な狸なのである。(文中敬称略)
杜父魚文庫
9747 消費税法案棚上げを決断? 渡部亮次郎

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