衆院は480議席。かつては300議席以上の圧倒的な多数を誇っていた民主党だが、ポロポロ脱落していまでは290議席。100人以上の多数派を占める小沢グループの60人が離党でもすれば、民主党は過半数の240議席を割り込む。
自民党から”小沢切り”を迫られているが、過半数を割り込むからオイソレとは乗れない”悪魔のささやき”に聞こえる。外見では民主党は290議席の絶対的な多数派にみえるが、内情は薄氷の上の乗る危うさを抱えている。
その中で消費増税法案を成立させようと野田内閣は突き進んでいるが、衆院での法案可決ですら容易ではない。しかも参院では与党系110議席(民主105)に対して野党系132議席(自民83,公明19,みんなの党11)だから、野党の協力なしでは法案の成立は望めない。
野田首相の周辺からは「野田さんはいささかもブレていない」と強気の発言が聞こえるが、不退転の決意だけでは乗り切れない山があり、深い谷が横たわる。
首相は来週行われる小沢元代表の会談で年内解散はしないと匂わせて、消費増税法案に反対しない約束を取り付けるとしよう。衆院可決は乗り切っても、参院段階では解散・総選挙の約束をしないことには、野党の協力は取り付けられない。
小沢氏との約束は反故にせざるを得ないから、もともと首相の専権事項である解散は約束の対象にはならない。この連立方程式をどう解くつもりだろうか。
行き着く先は野田首相と小沢元代表のガチンコ対決。問題は衆院本会議での法案採決で、民主党内からどれだけの造反票が出るかにかかる。
造反が本会議の欠席にとどまれば、野党の反対票があっても法案可決が可能なのかもしれない。党議拘束を無視して、野党に同調して法案に反対票を投じれば、除名処分の対象になるからである。
法案が否決されれば、野田首相は国民の信を問うために解散に踏み切るであろう。民主党は分裂する。小泉郵政選挙の再現となるだろう。そのような事態を招かないために、輿石幹事長が野田氏と小沢氏の間に立って右往左往するのだろうが、果たしてその力量があるのか、輿石氏の力も試される。
<消費税増税を含む社会保障と税の一体改革法案の審議が国会で続いている。
そうした中、注目されるのが、来週行われる野田首相と小沢元代表の会談だが、この結果次第では、民主党が分裂する可能性が、23日の審議で見えてきた。
小沢元代表の戦略は、野田首相が消費税増税で大幅に譲歩しないかぎり、反対の旗を振り続け、法案を採決させないという戦略だが、23日、野田首相は、今の国会中の採決を明言し、採決の先送り案を明確に否定して見せた。
野田首相は「基本的には、党議に従って行動していただく」、「採決をやらないということはありません」、「そのことから逃げるとか、そのことをやらない前提で法案提出をするなんてことは、政治家としては、あってはいけないことだと思うし、そんなことをするつもりは全くございません」と述べた。
野田首相は、消費税増税法案賛成は党議であり、この国会中に採決すると明言した。
さらに野田首相は、来週、小沢元代表と会談する見通しを示したうえで、「きちんと説明すれば、理解いただけるものと確信している」と述べたが、会談が物別れとなれば、採決の際に小沢グループが造反する可能性が高まる。
その場合、党議違反ということで、小沢元代表らが除名処分となり、党が分裂する可能性があり、採決を秋以降に先送りし、党分裂を避けようとしているともみられている輿石幹事長の対応が鍵となる。
今後は、会期延長幅や自民党との修正協議とからみ、採決の時期がいつになるかが最大の焦点となり、野田首相の決断が注目される。 (フジニュースネットワーク)
杜父魚文庫
9760 薄氷の上の乗る民主党の危うさ 古沢襄

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