9775 イスラエルのネタニエフ首相が近く訪中へ  宮崎正弘

軍事技術流出を警戒する米国、イスラエルは「テロ対策が主眼」と弁明。2011年8月に中国人民解放軍の陳丙徳・総参謀部長がイスラエルを訪問した。何が目的かと西側の情報筋が警戒したが、日本のメディアは殆ど無視した。
陳丙徳のテルアビブ訪問は、十年ぶりの軍事高官交流で、直前の同年六月、バラク国防相が北京を訪問した答礼とされた。
陳丙徳はイスラエル参謀長ベン・ガンツ推将と会見したほか、ペレス大統領を表敬した。ペレスは独立戦争を戦った闘士であり、国防相、外相、首相を経験した老練な政治家、とくに軍事問題には深い造詣がある。
2000年に米国の圧力でイスラエルは中国への武器輸出を控えた。そのうえ、イランの核開発が中国の秘かな支援でおこなわれたことは公然の秘密であり、イスラエル殲滅を公言するイランのアーマドネジャッド政権になったからはイスラエルと中国の関係は冷え切っていた。とくにミサイル部品、戦闘機部品の対中供与を中断してきた。
状況が打開されたのは中国がイラン制裁に加わってからである。
だが、米国ペンタゴン筋は、イスラエルはJ-10ジェット戦闘機ならびに無人偵察機の技術を中国に供与したと踏んでいる。
イスラエルと中国の貿易は双方向80億ドル、イスラエルからは農業技術並びに海水淡化プラントなど。イスラエルは1992年に国交を結んで以来、台湾と断交したが陳水扁・台湾総統の公式訪問を受け入れ、バランスを取った。
同時にイスラエル・中国の文化交流もすすんでおり、テルアビブは毎年、250名の中国人留学生を受け入れ、また広州にも領事館を開設、13年には四川省成都にも領事館を開設する。
米国が警戒を強めるのは表面的な交流の裏で、軍事技術の移転が進んでいること。両国が発表している軍事交流は、主として「テロ対策」であり、カウンター・テロに優れたイスラエルが対テロ訓練を施している。
これはチベットで治安維持にあたる人民武装警察の装備や訓練方法にも援用されている。「チベット人民を弾圧する暴力装置に手助けするのは止めるべきだ」と米国の人権団体の抗議も何処吹く風、イスラエルも国家利益遵守にあっては凄い政治力を発揮する。
そしてネタニエフ首相が近く北京を訪問する。(註 陳丙徳の「丙」は火扁)
杜父魚文庫

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