9788 母体を損ねても植民地だった国々が独立  宮崎正弘

台湾最大野党=民進党党首に蘇貞昌(元首相、元台北県知事)が復活。理知派学者女性から「肝っ玉母さん」が代理主席、そしてベテラン政治家へ。
5月27日、台湾の240ヶ所の投票所でおこなわれた民進党主席選挙で、下馬評通り、蘇貞昌が過半数を獲得し、党主席に選ばれた。「一強四弱」と言われる党首選挙だった。
蘇貞昌は50・47%(163、808票)を獲得し、他の四人の候補をまったく寄せつけなかった。二位は蘇換智(元台南県知事)で21・02%、三位は呉栄義(元副首相)で14・73%、四位は蔡同栄(前立法委員)で11・28%、最下位は許信良(元党主席)で2・49%だった。
 
これで三月総統選敗北の責任をとって党主席を辞任した蔡英文の後、臨時主席となったのは黄菊(高雄市市長)。蔡英文は新台北市の票を固めていたが、次の次に備えるためか、立候補を見送った。
蘇貞昌は台北大学ラグビー部出身で独立運動家らの弁護士として活躍した。近年は総統選挙への野心満々で、党をこれから如何にまとめるか政治力量が試されるが、中国問題で明確な姿勢を示しておらず、それが党内から批判の的になっている。
2014年に五大市長(台北、新台北、台中、台南、高雄)の選挙、ここで現状の3vs2を、4vs1へと逆転できれば、蘇貞昌が2016年におこなわれる総統選挙の最有力候補となる。だが、国民党の牙城である台北、新台北を民進党が奪回するには、まだまだ距離がある。
 
馬英九総統は5月20日、再任された総統式典で演説し、中台の「新たな協力分野」に言及した。「両岸には『民主、人権、法治』をめぐる対立が横たわり」、そのために「引き続き平和を強固にし、繁栄を拡大し、相互信頼を深める」と主張したに過ぎない。
もっぱら現状維持。「統一せず、独立せず、武力行使せず」の「三不」原則が国民党の近年の対中姿勢だ。
 
馬総統は、北京の用語を巧妙に援用して、中台共通の基盤は「中華民族」であり、その血縁、歴史、文化を共有する」と指摘した。加えて「『国父』とする孫文の『天下為公』と『自由、民主、均富(公平)』の理念は決して忘れてはならない」などと訴え、台湾国民の認識と大きな隔たりが歴然となっている。
国父記念館には訪れる人も少なく、毛沢東や江沢民が好んだ「中華民族」と「台湾人」は異なるという認識が、近年の台湾の世論調査から伺える。
馬総統は蘇貞昌に祝意を送り、両者会談を提案したが、蘇は返事を保留した。また中国は、こんかいの野党のトップを選ぶ政党内選挙に対して殆ど関心を示さなかった。
   
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 読者の声 どくしゃのこえ 読者之声 
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(読者の声)ベトナムの商都・ホーチミン市(旧サイゴン)の地下鉄1号線の高架土木工事を住友商事が受注しました。
http://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000115.000000726.html
ホーチミン市中心部の Ben Thanh から市北東部に位置する Suoi Tien に延びる総延長19.7キロメートル(地下鉄および高架鉄道)の1号線建設計画のうち、17.2キロメートルの高架土木(11駅の建設を含む)および車両基地(約21ヘクタール)の建設工事で、車両については日立が交渉中。バンコクの地下鉄は日本のODAで建設されながら肝心の部分はジーメンスにさらわれてしまいました。
その反省からか「1号線の建設は、他のパッケージ(車両システム、地下土木工事)を含め日本政府からベトナム政府へ供与される本邦技術活用(STEP)条件付き円借款を用いて実施されます」とあります。
要するに紐付き援助ですが、日本国民の税金を使うからには当然でしょう。
この地下鉄1号線の始発駅となるベンタン、現在ではファングーラオ通りの北側に公園が整備されていますが、元々はベンタン市場のすぐ西に旧サイゴン駅があったものが1970年代に廃止された跡地、旧サイゴン駅に隣接してサイゴン~ハノイ~フランス勢力圏の広東へと伸びる鉄道まで管轄するフランスの鉄道管理局が置かれていたといいます。
戦前の本を読むと、日本軍の北部仏印進駐後もハノイ~広東ルートによる国民党支援物資の輸送はフランス当局に黙認されていたようです。
そんな歴史のある旧サイゴン駅、鉄道好きとしては旧駅舎や蒸気機関車の一輌くらい残しておいて欲しかったところですが、ハノイ政府はフランス帝国主義の残滓とでも考えたのか、それともサイゴン市民に対する力の誇示なのかあっさりと取り壊してしまいました。
こんなことをするからハノイ政府はよけい嫌われる。
フエでもダナンでもコンサン(共産党)は大嫌いという人が多かった。もちろんサイゴンでも。現在のサイゴン駅(ガー・サイゴン)は大通りから一本裏手の寂れた雰囲気の場所ですから余計に残念でなりません。
台湾では台北駅を通る線路を1989年に地下化しましたが、地上には立派な駅舎が建てられ、戦前の機関車の写真が展示されていたり、大通りにもかつて列車が走っていたことを示す案内板があったりで日本統治時代を正当に評価していることがわかります。
ベトナムに話は戻りますが、現在は公園となっている旧サイゴン駅跡地、朝夕は市民の憩いの場所。バドミントンにセパタクロー、ジョギングの男女、アメリカ流の激しい曲に合わせてのエクササイズ、バンコクではめったに見ることのない愛玩犬のお散歩。
蓮池のほとりでは鳥籠の小鳥がさえずる。バイクの騒音とクラクションの響きがなければ実にいい雰囲気なのです。
ところが、そんな公園も夜は違います。
女性が次から次へと声をかけてくる。さらに以前は見かけなかったオカマさん(レディ・ボーイ)、バンコク同様に超ミニにハイヒール、バンコクより劣るもののマニラのオカマよりはずっと美人。オカマさんが堂々と歩けるようになっただけでもたいしたもの。
ベトナム人の体型はタイ人と似ていてイカリ肩、肩幅と腰の幅がほぼ同じ、Tシャツでの後ろ姿は男女の区別がつけにくい。ウエストは細いので糸巻き型体型とでもいえるかもしれません。一番違うのが骨格レベルでの胸の厚さ。ベトナム人は胸が薄く、マンガの絵のような二次元的雰囲気。
タイ人はクメール人ほどではないものの胸板が厚く鳩胸が多い。
そのせいかタイ人女優がドラマでアオザイを着ても似合わない。南ベトナムが戦争に負け、多くのベトナム人がタイにも流れ込みました。
彼らはその後、フランスやアメリカへと渡りましたが、タイでレストラン事業を成功させベトナムに戻った人もいる。バンコクのショッピングモールに出店するアジアン料理の店は日本食以外ではベトナム料理くらい。
新宿のタイ料理店の女性、タイ人なのにベトナム人の雰囲気があり、聞いたところタイ・ベトナムのハーフでした。両国は間にカンボジアを挟むため領土問題もなく、多くの面でベトナムの先を行くタイにとってはビジネス・チャンスに恵まれた国。
エアアジアなど格安航空が後押ししているのかタイ人観光客も目立ちます。
ベトナムの人口は約9千万人とドイツ以上、タイが6千5百万前後でフランス並、ベトナムのGDPはタイの半分以下、一人当たりでは1/4以下。サイゴン駅~ハノイまでの列車は1700km以上の距離を約30時間で結びます(時速60km弱)。コンテナ貨物では72時間(時速25km程度)。危険な橋梁が多数あり、日本のODAでの改修が済めば所要時間を5時間程度短縮、それでも時速70km程度。単線としては頑張っている方かもしれませんが動脈というには細すぎます。
ハノイ~サイゴンの旅客輸送なら格安航空のシェアが大手を逆転しているマレーシアやインドネシアの例を見ても航空機の圧勝となる距離、新幹線よりもコンテナ貨物を24時間以内で走らせる貨物鉄道や高速道路の整備が先でしょう。
在来線の複線化+標準軌に改軌すれば時速160km程度は出せます。中国は標準軌のためパクり新幹線以前から時速160km運転をしていましたし、大型の2階建て車両も走らせていました。
ベトナムはサイゴン~ハノイが全通した1936年当時の老朽化した設備と車両しかありません。しかもインフラ整備は日本のODA頼み。ホーチミン市の地下鉄も1号線は日本のODA、2号線はドイツの援助がメイン、計画は8号線までありますが、資金の手当ができるのか不透明なものばかり。
タイやベトナムの現状を見ていると、現地から見た日本の存在感の大きさが際立ちます。
日本の大東亜戦争での敗戦、タイの政治家は日本を難産の母親にたとえました。母体を損ねても植民地だった国々が独立したことをいいます。植民地諸国が独立した今は対等の立場ですから、さながら日本は面倒見のいい長兄でしょうか。
ODAによるインフラ整備に加え、植林による緑化、農業技術の移転、金型の技術者養成など無償での技術支援の数々、出世払いの仕送りをした上で家庭教師までつけているようなものです。
それでも膨張する中国を抑えられるのか。日本のODAに対する感謝プレートがあるバンコクの地下鉄やサイゴンの空港に対し、日本の支援などなかったかのように振舞う中国・韓国。
韓国人は成金そのものでベトナム女性を花嫁として買っては虐待するとして、50歳以上の韓国人とベトナム女性の結婚は認めない、韓国人は年齢が16歳以上離れた若いベトナム人女性と結婚できない、という規制がかかったりしています。
韓国人との結婚規制はカンボジアでも同様です。韓国・朝鮮人が女性を人間扱いしないのは慰安婦問題を見ても明らか。女性を騙して売り飛ばす、やっていることは今と全く同じ。慰安婦だった女性は日本に文句を言う前に女衒の韓国・朝鮮人に文句を言うべきです。
ASEANに関する話題、現地では多いですね。
人・物・金の移動が活発化するなかミャンマーのような落ちこぼれの国もなんとか引き上げようとしている。日本では報道がほとんどありませんが、ASEANのスポーツ大会など各国の応援ぶりはすごいし、メダル争いも本気。
シンガポールがけっこう強いのが意外だったりしますが、スポーツをやるにも金がかかることを思えば当然の結果かも。スポーツを通じて競い合い、切磋琢磨しながら互いに認めあっていくASEAN諸国、都市部に限れば先進国となんら変わらない意識を持つ人が増えている。アジアで日本だけが経済大国といわれていた時代を考えると隔世の感があります。
中国の公園では高齢者ばかり目立ちますがサイゴンでは圧倒的に若い人が多い。
出生率は2.0を割り込んだといわれるベトナムですが、日中韓と比べたら若い国。スーパーや電器店で見た電気炊飯器は日本の2倍の炊飯量、一升炊き以上(1.8L~2.2L)がメイン(日本は5.5合炊きが中心)で、コメの消費量が一人当たり日本の約3倍であることがわかります。
食堂では洗面器のようなボウルにご飯が山盛りで出てくる。小さな茶碗で5~6杯は食べますが、タイ米やベトナム米は炊き上がりが日本米の2倍ほどのボリュームなので胃にもたれることもない。以前フエで仲良くなった観光船の子供の家(船)でご飯を食べた時のこと、おかずは川エビをニョクマムと唐辛子で味付けしただけのもの。
それでご飯を何杯でもおかわりする。ベトナムの1990年代は玉子焼がごちそうでした。
いまでも日本の昭和30年代~40年代といった雰囲気を感じます。中国はすでに高齢化社会の兆しが見られますが、タイやベトナムが先進国水準まで到達するのか、高齢化によりそれ以前で行き詰るのか、日本の高齢化社会の経験が今後のアジアの成長に生かされるのか、昼間からビールを飲みながら公園の人々を見て思うのでした。(PB生、千葉)
(宮崎正弘のコメント)ベトナムですら出生率が2を割った? 驚異的ですね。十年ほど前にバングラデシュで、女性の晩婚化、出生率が2を割ったという話を聞いて驚きましたが、それだけ女性の雇用が急増した証明でもあります。
それから女性の好みの傾向が出ていましたが、中国では日本女の人気は依然として高く、蒼井空、飯島愛、小沢マリアなど「三代ポルノ女優」も超有名人。普通の女優でも、酒井法子、松島菜々子、米倉涼子の写真とゴシップが新聞の芸能欄を埋め尽くし、偽のDVDが出回り、しかしなんと言っても日本の女性雑誌がほぼすべて中国語版が出ていることです。
中国政府が反日など獅子吼しても、一般女性には何も関係がないことがわかります。
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