9834 内閣改造の目玉人事となった森本防衛相  古沢襄

消費増税法案の与野党協議を促進させる条件整備といった程度の感触しか持てなかった内閣改造だったが、野田首相は防衛相には森本敏拓殖大大学院教授(71)の起用することによって改造人事の目玉に据えた。
森本氏は四月二十四日の産経新聞・正論で「ミサイル情報管理の鉄則守れ」と提言している。北朝鮮が長距離弾道ミサイル発射を行って失敗した直後の論評。その中で次の指摘を行った。
①今回の長距離弾道ミサイル発射は、北朝鮮にとって政治的に失敗が許されなかったはずである。それにしては、新しい発射基地に新たに組み立てたミサイルを、今までと異なる方向に発射するなどリスクを取り過ぎて、失敗に終わった。次回は失敗が許されないだろうから、北朝鮮技術者は命がけで再度の挑戦を試みるであろう。
日本にとっては、北朝鮮のミサイル開発が進むことにより、既に配備済みのミサイル(200基以上のノドン)に核弾頭が搭載される方が脅威である。現在は、北朝鮮が3回目の核実験を準備しているとみられ、要警戒であろう。
他方、日本のミサイル防衛態勢は今回、万全であった。実戦並みの訓練も積み重ね、練度も一層向上した。こうしたミサイル防衛システムを保有する国は米国を除けば、イスラエル、サウジアラビアなど僅かであり、日本がミサイル防衛の導入を決定したことは適切だった。もっとも、日本のミサイル防衛は少数の目標に対応できるものの、中朝両国の弾道ミサイルが多数、飛来すると対応できるわけでなく、システムを今後、質・量とも改善する必要があろう。
③まず、前提となる事実を明確にしておきたい。日本のイージス艦は、飛んでくるミサイルが日本の領域に入る場合、これを破壊して国民の安全を守るために最適と思われる海域に配備されていたのであり、朝鮮半島の情報収集のために配備されていたわけではない。北のミサイルが発射後1分半で爆発・落下したため、沖縄周辺にいた日本のイージス艦のレーダーでは捕捉できなかったのである。
韓国のイージス艦は、ミサイル防衛仕様になっていないが、監視レーダーは機能しており、発射直後の北朝鮮ミサイルを捕捉するのに最適の位置にいた。だから、情報を直ちにつかむことができて、韓国側の発表が早かった。ミサイルがそのまま飛翔(ひしょう)していれば、日本のイージス艦でも捕捉し、適切に対応できていたはずである。
日本の安全保障問題について一貫して親米保守派の立場を貫いてきた森本氏には防衛省内にも支持者が多い。集団的自衛権の行使についても積極的な立場にある。
<野田佳彦首相は4日、内閣を再改造する。参院で問責決議を受けた田中直紀防衛相と前田武志国土交通相を含む5閣僚を交代させる。防衛相には森本敏拓殖大大学院教授(71)の起用が固まった。民間人の起用は防衛庁長官時代を含め初めて。スパイ疑惑のある中国大使館の元1等書記官との関係が浮上した鹿野道彦農相の後任として、郡司彰元農水副大臣(62)の初入閣が決まった。
国交相には羽田雄一郎民主党参院国対委員長(44)を充てる。弁護士報酬をめぐるトラブルが指摘されている小川敏夫法相も交代させ、滝実法務副大臣(73)を昇格させる。国民新党代表の自見庄三郎郵政改革・金融担当相が退任を申し出たことに伴い、後任に同党の松下忠洋復興副大臣(73)を充てる。
藤村修官房長官ら他の閣僚は再任する。前田、田中両氏の交代は自民党の要求に沿ったもので、事実上の更迭といえる。輿石東幹事長ら民主党執行部については、羽田氏を除き続投させる方針だ。
首相は4日午前、国民新党の自見氏と会談し、内閣改造の方針を確認。自見氏に対しに「内閣を強化したい」と意義を強調した。
首相は臨時閣議を開き、全閣僚の辞表を取りまとめる。その後、組閣本部を設置し閣僚を官邸に呼び込む。午後には首相自らが記者会見し閣僚名簿を発表する。皇居での認証式を経て野田再改造内閣が4日中に発足する。野田内閣の改造は1月に次いで2回目。
首相は再改造を機に、消費税増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案の成立に向け、自民党との連携を加速させる考えだ。自民党の修正協議に速やかに入り、21日に会期末を迎える今国会中の衆院採決を目指す。(産経)>
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