米ウォール・ストリート・ジャーナルは、野田首相が消費増税で伸るか反るかの勝負に出たと報じている。野党の自民党と公明党が修正協議に応じたが、最終段階で三党の党首会談も予想されている。
いわば瀬戸際に追い詰められた野田首相だが、党内で最大勢力を持つ小沢グループの反対を覚悟のうえで、首相、岡田副総理、安住財務相らは解散もいとわないと、物騒な話も洩れてくる。さらには自民党の賛成を確信した段階で、与党内の完全合意を待たずに採決に踏み切る可能性も取り沙汰されている。
ウォール・ストリート・ジャーナルは、総選挙や与党分裂につながり、日本の政界地図が塗り替えらる可能性もあると分析した。
<【東京】野田佳彦首相にとって、今後2週間が首相の目指す消費増税法案の成否を決める、いわば伸るか反るかの勝負どころだ。総選挙や与党分裂につながり、日本の政界地図が塗り替えらる可能性もある。
失敗した場合のリスクは大きい。消費増税法案の行方は、世界の投資家や格付け会社が注目しており、膨大な政府債務を削減しようとする日本の意思をうかがう試金石とみている。政府債務は国内総生産(GDP)の200%以上で、先進国では最大だ。
消費増税法案は2015年までに消費税を2段階で現行の2倍の10%に引き上げるもので、その可決に向けた動きは7日一歩前進した。野党がこれと関連する社会保障法案の修正協議を始めることに合意したからだ。野党が参議院を支配しているため、大半の法案可決のためには野党の支持が必要だ。
野党が修正協議に応じたのは、野田首相が今週初めに内閣を改造し、野党が要求していた閣僚2人の更迭に応じたためだ。
しかし与野党間で合意を見い出せるかどうか、見通しは全く不透明だ。野田首相が2段階の消費増税と一体で実施したいとしている社会保障改革の主要な政策について与野党の立場が大きく隔たっているためだ。
最大野党の自民党は消費増税に賛成している。しかし同党は与党民主党が最低保障年金と高齢者医療制度廃止の取り下げに応じるよう求めている。この2つの政策は、民主党が政権を奪取した2009年総選挙の際に掲げた政策綱領の主要な柱だった。
自民党の社会保障法案修正要求を受諾すれば、民主党は同党から消費増税法案支持を取り付けられる。野田首相は国会会期末の21日までに消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革関連法案を成立させたいとしている。しかし野党の要求を受諾すれば、野田首相は、野党に譲歩し過ぎ、有権者への約束に背くことになると与党内で反発を招く公算が大きい。
野田首相には与党内でこれ以上の議員の離反を放置する余裕はない。同首相は既に小沢一郎元代表率いる党内最大グループの造反の可能性に直面しているからだ。
小沢元代表は7日の議員会合で、「消費増税のためには、国民との約束を捨ててもいいと考えているようにみえる人々がいる。これは民主政治の崩壊につながる」と批判した。
小沢グループには民主党議員100人以上が所属しており、さらに多くの議員が法案に反対すれば、自民党の支持があっても法案は衆議院を通過できなくなる恐れがある。重要法案をめぐってこのように大規模な亀裂が生じれば、民主党の分裂につながりかねない。
さらに消費増税で失敗すれば、同法案成立に政治生命を賭けると主張していた野田首相に対する退陣要求ないし総選挙要求が頂点に達する可能性がある。
野田首相が与党内の支持をこれ以上失わずに自民党の支持を取り付ける1つの方法は、社会保障改革法案を一時的に棚上げすることかもしれない。自民党は社会保障改革を討議して1年以内に結論を出す「国民会議」の設置を提案しており、野田首相がこれに乗れば、消費増税を貫け、一方の野党は自らの主張が通ったと主張できる。
だが、たとえ消費増税法案が成立したとしても、総選挙になる可能性も残されている。自民党が消費増税法案支持の条件として、衆議院の解散を求め続けているからだ。
自民党の谷垣禎一総裁は7日の記者会見で、民主党は消費増税しないとの選挙公約を撤回する責任を取らねばならないと述べ、「解散を求めるのが野党トップとしてのわたしの仕事だ」と語った。
与党民主党の人気度が低下し、野田首相支持率も低いだけに、民主党の大半の議員は早期総選挙を避けたいと望んでいる。世論調査の多くで、首相支持率は30%前後にとどまっている。(ウォール・ストリート・ジャーナル)
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9863 これから二週間がヤマ場 古沢襄

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