9867 「維新・28%」をどうみるか 岩見隆夫

28%という数字は衝撃的である。4日発表された毎日新聞の全国世論調査で、<仮に今、衆院選が行われ、「大阪維新の会」(以下維新)が候補者を立てた場合、比例代表でどの政党に投票するか>という設問に対し、維新と答えた人の比率だ。
ついで自民党16%、民主党14%、維新は両党を足した数字に近く、第1党に躍り出た。かつてない異変である。
すでに毎日新聞の3月調査でも、維新に期待する61%、石原新党に期待する38%に対し、民主支持14%、自民支持13%となっていた。維新人気の高まりはただごとでない。
これらの数字をどう受け止めるか。民主党の若手議員が、「維新が(候補を)立ててきたら、我々ばたばた落ちますよ」と言うのを聞いた。恐怖心である。一方、
「あんなサーカスみたいなこと、続くわけがない。賞味期限はこの夏までだ」と自民党の長老は言ってのけた。「まあ、油断はできん」とも付け加える。懐疑的なとらえ方だ。
昨年1月、民主党の辻元清美元副国土交通相(大阪10区)は民放テレビ番組で、維新代表の橋下徹大阪府知事(当時)と大阪都構想について討論したあと、廊下で立ち話になった。辻元は橋下の9歳年長で衆院当選4回、いわば政治の先輩だ。
「もう少し重心を落として、ていねいに慎重にやった方がいいよ。私もかつて派手にやっていて、痛い目にあったからね」とアドバイスしたという。
派手に、というのは社民党の旗手として脚光を浴びた頃だ。頂点は01年5月の衆院予算委、小泉純一郎首相による集団的自衛権行使の検討発言をめぐって正面衝突となる。ついにあの、
「ソーリ(総理)、ソーリ、ソーリ……」が飛び出す。12回もソーリを連発し、テレビ中継の瞬間視聴率が13・1%、国会中継史上最高を記録したのだ。<正義のヒロイン>扱いされ、
「初の女性総理大臣に」と声もかかった。辻元はまもなく失脚するが、大阪市長に転じた橋下はトーンを上げるばかりだ。
<政治家には時々、バブルが巡ってくる。期待されればされるほど、自分をさらに大きく見せようとしてしまう。テレビを通じてバブルの自分がどんどん増幅され、いつしか「モンスター」のようになってしまう。しかし、バブルはいつかはじけるものだ。
テレビの画面に連日映し出される橋下さんはいま、バブル期にいるように感じ、大きな危惧を抱いている>と辻元は先月出版した「いま、『政治の質』を変える」(岩波書店)のなかで書いた。
28%バブル論だ。泡だからいずれはじける、と。そうだとしても、現に28%であるからには、近づく衆院選をかき回さないはずはない。
はっきりしているのは、維新という新勢力が既成政党を浸食し始めた。毎日調査でも、民主支持層の23%、自民支持層の15%が比例代表で維新に投票すると答えている。さらに増えるかもしれない。
それなのになぜ維新と対決する政党が現れないのか。けんかすると損するという打算からか。
割合自由な立場の鳩山由紀夫元首相が、「橋下市長は次期衆院選に向けて首相公選制や参院廃止など大きなテーマを掲げているが、実現の期限を区切っていない。マニフェスト(政権公約)とはほど遠く、正攻法ではない」と批判したが、その程度だ。既成政党はあなどられる。(敬称略)
杜父魚文庫

コメント

  1. momotarou より:

    橋下氏はここ辺でやめるでしょう。一国会議員になるなどは興味はないはずです。後は「維新の会」の中から活躍する人物が出てくる。橋下氏は「平成維新」ロケット一段目です。

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