丹羽宇一郎中国大使の言動パターンについて試みた分析の紹介を続けます。やはりこういう背景と体質の人物を中国駐在大使に選んだ民主党政権の非が最も問われることになりそうです。
丹羽大使は「民」の効用を強調するが、中国にはそもそも完全な意味での「民」はない。あるのは、限りない「官」なのだ。
中国は言うまでもなく共産党の一党独裁である。共産党の支配は経済分野にも及ぶ。中国経済の主力となる国有企業はみな共産党や政府の直接の統治下 にあり、民間とされる企業も党の監督が課されている。だから、伊藤忠を含む日本企業にとっても、他の諸国でのような「民」と「民」との対等な関係は中国には存在しないのである。
丹羽大使が江蘇省でかつての「朋友」と再会したといっても、しょせんは民の伊藤忠の代表と官の中国共産党の代表の顔合わせなのである。「日中関係は夫婦以上」などというリップサービスもとんでもない。民主主義の自由の国の日本と、共産主義の抑圧の国の中国と、どこが「夫婦」なのか。しかも両国間には中国が仕掛ける尖閣という紛争が存在するのだ。
丹羽大使が求める日本の対中ODAの再強化という発想も、日本の国益から外れ、中国側の利益や要求を優先するように映る。日本から中国へのODAはすでに3兆円以上も供与されたのに、丹羽氏が述べる「日中関係の改善」にはなんの役にも立たなかった。両国関係の現状を見れば、容易に立証される現実である。
中国政府はそもそも日本からの巨額の援助の事実を自国民に知らせない。しかも中国はもう日本よりもGDPの多い世界第2の経済大国として外貨保有 も貿易黒字も世界のトップなのだ。中国自体が多数の諸国に経済援助を与えてさえいる。そんな大国に経済の不況と縮小の日本がなぜ援助を与えねばならないのか。
日本にとって中国へのODAの金額と日中関係の状態の間にはなんの因果関係もないことは立証ずみなのである。だから丹羽大使の提案は、中国を喜ばせるという要因以外に論拠がどこにも見当たらない。
<中国当局に嫌われては商売ができない>
このように丹羽氏の言行録から大使としての欠陥を列記していくと、同氏の大使任命のそもそもの間違いがはっきりと浮かび上がってくる。簡単に言えば、中国でビジネスをする日本企業の代表を日本大使に任命することの危険性であり、欠陥である。(つづく)
杜父魚文庫
9896 中国を喜ばせる体質の日本大使 古森義久

コメント
チョト前には阿南大使がおりました。