中国バブル破綻の象徴=オルドスの鬼城(ゴーストタウン)の隣も。パオトウ東河区の開発区もバブル破裂、責任者ふたりが自殺の悲惨。
内蒙古省オルドスに現れた「鬼城」(ゴーストタウン)は世界のマスコミが報じた。百万都市ができて、役所、学校、商店街、医院、ショッピング・アーケードに映画館。ブラジリア並みと騒がれて、世界の取材陣が飛んだ。
「ところが住んでいる人はいない」と『タイム』誌がカラーグラビアで特集・報道した。オルドスは人口が150万。新開発区は隣接する砂漠に建設した新造都市で、カンバシ区(康巴什区)。旧市内からバスで一時間ちかくかかる。
もともと高度成長にともなって需要がのびた石炭で、内蒙古省のパオトウからオルドスの景気が沸騰し、おまけにレアメタル相場が三十倍に跳ね上がり、「石炭成金」と「レアメタル成金」。
「さぁ、次は新都心建設で儲けよう」とかけ声も勇ましく、地元の起業家や行政側が強気の読みをしたのも無理はなかった。
2003年頃から建設が始まり、07年頃までの地盤改良と造成期間だから土地の価格が上昇し続けていた。
これを千載一遇の投機機会と読んで、他省の投資家らが家屋も建たない裡から着手金を打った。デベロッパーは運転資金が続いた。このころは豪邸が中心でメゾネットの瀟洒な別荘など700棟が作られたにすぎず、物件はすぐに売れた。
その勢いで、およそ10万坪の宅地開発に豪邸建設ラッシュ、高層ビルのマンションが林立する。バブルは2007年から2010年まで続いた。
そして世界に晒した残骸が「百万都市」を謳ったオルドス市のカンバシ区が無人のゴーストタウン化していた姿だった
現在、オルドス市政府の『行政指導』によって、公務員、関連業者、低所得者などがカンバシ区へ、かろうじて28600名が移住した。
百万都市を標榜していたのだから、居住者が百分の三弱しかいないということは、夜になると依然として幽霊都市である。
▼パオトウもまた新開発区がゴーストタウン化
オルドス市の北方50キロにパオトウ(包頭)市が開ける。パオトウも戦後、石炭景気で人口が増えた新興都市、いまや内蒙古省ではフフホトに次ぐ大都会に変貌した。
パオトウ新開発区では05年から高層ビル、とくに34棟のマンション建設がラッシュを迎え、およそ三万坪の新開発区が設定された。パオトウ市東河区のあちこちにビルが林立し始めたのだが、売れ行きはサッパリ。
2012年6月6日、パオトウ最大の開発業者=鼎太置業のCEO、魏剛が自殺した。七億元の融資が得られず、建設中のビルは工事中断、建設労働者の多くが半年以上、労賃未払いのまま。
2010年四月にもパオトウの恵龍集団CEOが焼身自殺をしている。この恵龍集団の場合、1500名あまりの投資家から出資をつのり、14億元の借金をつくって、返せなくなったからだった。
かくして過去二年間、パオトウ市の建設業界は青息吐息、およそ1500社が借金地獄にあって、業務停止状態に陥っている。
他方で、資金を転がすため「投げ売り」が始まっており、売り出し価格の十分の一の値段で多少の取引はおこなわれているが、パオトウは96年5月3日にマグニチュード6・4の地震の襲われており、住宅需要があることは事実だ。
それにしても、無謀な投資がなぜ継続されたのか?謎だらけである。
第一に最初から資金不足なのに、なぜ強気の建設をしたか。第二の謎は、需給バランスから言っても、それほどの住宅戸数は不要なのに、なぜ発狂したほどの強気が継続されたか。第三は地下銀行の存在と高利貸しの相関関係である。
中国的バブルの特質は、博打大好きな中国人の性格が災いしている。
そして地下銀行に金をだすほうが、銀行預金より金利が高いため、人々は高利貸しの胴元になる。それも公務員が多い。
かくして高利が運転に躓くとマフィアの高利に依存するという悪循環が繰り返される。買い手が不在でも、建築工事を続行するのは、あたかもエンロンが投資家に見学させたディーリングルームで巧妙な芝居で取引があるかのように見せかけていたように、ポンジ・スキーム(詐欺的な投資呼び込み)である。
パオトウ最大の倒産と社長だった魏剛の自殺により、出資者は真っ青となる。むろん、他の地下銀行のみならず下請け、孫請けの工務店、建材業者、電気工事、水道工事の下請け、労働者など、被害の連鎖は果てしなく拡がり、先行きは真っ黒である。
賃金夫払い労働者が同市だけで11000名もいるというから、暴動がおきても不思議ではないだろう。
▼地元裁判所は金銭トラブルの訴えで長蛇の列
ちなみにパオトウ市中級裁判所に持ち込まれている「借金返せ」の訴えは、2011年だけで1043件、被害総額2億8000万元、2010年は981件、1億8000万元だった。
内蒙古省書記は共青団のライジング・スターで次期政治局常務委員会入りもあり得るのではと期待される胡春華。その実力のほどが試される。
中国経済はとうに不動産バブルの破綻が始まっているのだが、中央政府は金利切り下げ、預金準備率の緩和など小手先の政策を連続させてその場しのぎを続けた。
それでもバブル破綻連鎖はおさまらず、一方でインフレを睨みながら、結局は政府支出増大、プロジェクト継続という、第二、第三のバブル創出に舵を切った。
だから行く手は暗い。他方、中国の富裕層はすでに頭を切り換えて、米国、カナダの不動産物件を購入し続けており、2010年に合計48億ドルだった対北米不動産投資は、2011年に90億ドルを記録した。前年比88%増という異常な熱狂は、どうしたものか。
杜父魚文庫
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