ロシアはこれからどうなるのか。日本にとっても真剣な関心事です。
そのロシアの針路に重大な影響力を持つのはまた大統領となったプーチン氏です。そのプーチン氏の公私を分析した興味ある新書が出ました。著者はロシア・ウォッチャーとして定評の名越健郎氏です。
<独裁者プーチン (文春新書) >
プーチンが大統領に返り咲いた。2000年からの12年の統治に加え、さらに2期12年にわたって長期政権を維持する可能性すら出てきた。プーチンは強面でクールとみられ日本でも人気があるが、この「隣国の独裁者」の素顔は知られていない。
本書では豊富なエピソードや肉声を通じ、その人物像に迫りながら、なぜスパイ出身の政治家が強力無比な「皇帝」に成り上がることができたのか、その謎を追った。
プーチン政治とは、一言でいえばバラマキ政治であり、裏を返せば愚民政治を旨としている。ジェット機を操縦したり虎退治をしたり、あるいは「国民との対話」という4時間以上のテレビ出演といった派手なパフォーマンスなど、他の先進国の指導者ではとても考えられない。
メディア操作はお手の物である。プーチンは貧しい労働者階級の家庭で育ち、子供のころからの夢であったKGBに入ったが、鳴かず飛ばずの中佐止まり。
その後、ひょんな ことからサンクト・ペテルブルクの副市長となり、中央政界に出てとんとん拍子に出世した。そのために、彼の経歴には謎が多い。
「今日の自分があるのは柔道のおかげ」と公言するほどの日本贔屓で有名だが、政権の闇は深い。
資源依存型の経済運営で国策企業に側近たちを送り込むなど、あらゆる利権をクレムリンで 掌握している。外交面でも徹底した首脳外交でベルルスコーニやシュレーダーらとは格別昵懇であり、武器輸出のセールスマンとしても名高い。
ただし3期目はいばらの道ともいわれ、資源中心経済は行き詰まりを見せている。今後、プーチンが新たな活路を見出せるのか、はたまた停滞に陥るのか……ロ シアはいまその分岐点に立っている。
日本にとっては貿易相手国として重要であるし、領土問題や資源開発でもプーチン・ロシアの存在感は増している。本書を読むとある意味では北朝鮮の金正恩よりも怖い、「隣国の独裁者」の素顔が見えてくる。
内容(「BOOK」データベースより)
大統領に復帰し、さらなる絶対的権力者となったプーチン。貧しい労働者階級からKGB中佐を経て頂点の座に上り詰めた軌跡を追うとともに、バラマキ政治を展開し、派手なパフォーマンス、水戸黄門ばりのテレビ対話など、日本では知られていない「黒い皇帝」の素顔に迫る。
杜父魚文庫
9917 「独裁者プーチン」 古森義久

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