■前回、ヒラリー夫人との対決しこり?
【ワシントン=古森義久】米国大統領選挙が熱気を増すなかで民主党のビル・クリントン元大統領がオバマ大統領に対し批判とも受け取れる言動を繰り返し、 複雑な波紋を広げ始めた。クリントン氏はオバマ支持を公式には表明しながらも、留保をちらつかせ、前回の選挙でのオバマ氏とヒラリー・クリントン氏との対決が尾を引いているという推測までを生んでいる。
◇
クリントン元大統領は今年の大統領選や連邦議会選で民主党候補支援の資金集めなどを積極的に展開している。民主党側での人気は高く、その言動は注視されるが、5月末、共和党ミット・ロムニー候補のビジネス歴へのオバマ陣営の攻撃に反対し、民主党全体を緊張させた。
◆見解の食い違いも
オバマ陣営が、ロムニー氏の過去の投資会社での活動を激しく非難するテレビ広告を流したのに対し、クリントン氏は「他企業への投資が悪い行動だと批判すべきではない。ロムニー氏のビジネス経歴は立派だ」と述べたのだった。
続いてクリントン氏は6月上旬、「現在のブッシュ暫定減税はすべて来年も延長されるべきだ」と言明した。オバマ大統領はこの暫定減税の今年末廃止を唱え、とくに年収25万ドル以上の高所得層への暫定減税措置に猛反対している。だがクリントン氏は高所得層だけの増税にも不同意を示した。同氏はまた米国経済の現状を明確に「不況」と評し、「経済回復期」とするオバマ政権の公式見解に背を向けた。
この摩擦の背景には、前回大統領選でのオバマ氏とヒラリー夫人との民主党指名争いが関係しているようだ。6月5日のニュージャージー州での民主党下院予備選ではクリントン氏は前回、ヒラリー候補を支援したビル・パスクレル候補を全面的に応援した。オバマ大統領は前回、自分を支持したスティーブ・ロスマン 候補を支援して、クリントン氏とは対立した。予備選ではパスクレル氏が圧勝し、クリントン氏の政治力を立証する形となった。
◆「報復」か「戦略」か
クリントン氏はオバマ氏への公式支援は明確にしているが、なお米国メディアからは「オバマ陣営にとってもろ刃の剣」と評される。クリントン氏のオバマ批判の言辞が「前回選挙でのオバマ陣営からの攻撃への報復」だとか「ヒラリー夫人を次期大統領または副大統領にするための戦略」だとする推測も語られている。
共和党系の政治評論家ドナルド・ランブロ氏は「クリントン氏は経済政策面でオバマ大統領の市場経済否定に近いウォール街攻撃などに強い反対を抱いており、民主党支持の基本は変えないまでもそうした不同意の点をつい述べるのだろう」との見方を示した。
杜父魚文庫
コメント