「姓氏家系大辞典 太田亮」全三巻なのだが、古代からの日本の歴史を読み解くうえで欠かせない辞典である。NHKの大河ドラマ・平清盛に出てくる人物像は、平安末期を彩った人たちなのだが、現代の一般人には馴染みが薄い。
多少なりとも歴史学徒だったことがある私とて平安末期にはあまり関心がなかった。その知識の穴を埋めてくれるのは「姓氏家系大辞典」。
■太田亮(おおた・あきら、1884年7月1日 – 1956年5月27日)=奈良県出身の日本史学者。氏族制度の研究で知られる。1941年に立命館大学教授となり『姓氏家系大辞典』『家系系図の合理的研究法』などの主著がある。
太田氏は戦前の一九二〇年に全一冊の「姓氏家系辞書」を刊行している。その後、新たな資料収集を重ね、これに大幅な増補をし全三冊の「姓氏家系大辞典」の刊行となった。
<開闢以来三千年。一氏・蕃殖して数十氏となり、数百流に分かれ、ついに数千の苗字を起せしものあり。世俗、源平藤橘(げんぺいとうきつ)を四姓といえど、その他、古くは物部、大伴、多、阿倍、蘇我、毛野、下りて、紀、清原、菅原、大江、皆然り。また秦氏あり、漢氏あり。>
6675ページの序文の言葉だが、「姓氏家系大辞典」の特徴は、どんな小さな姓氏家系についても出典が明記されていることである。私はむしろ明記されている出典を求めることにしてきた。
太田氏が亡くなって、戦後、角川書店から復刻版(四万二千円)が一九六三年に刊行された。私が所有しているのは一九七三年版。復刻版の刊行は続けられ、一九九五年版まであるというから、隠れたベスト・セラーの辞典といってもいい。
明治維新後の「新姓」は別だが、江戸時代から伝わる姓氏家系は、その淵源を辿ることによって、先祖のルーツがかなり分かる。私の父方は菩提寺の過去帳に古沢屋と記されているが、さらに辿ると常陸国下妻領の赤松姓ということが分かった。
母方は信濃国上田の木村姓の士族だが原姓は佐々木。佐々木姓は全国で40万人いるが、宇田源氏の流れで、支流は亀井、木村、西尾、曲直瀬(まなせ)など数多くある。
士族を誇りにしていた曾祖母が「宇治川の先陣を争った佐々木高綱が先祖なのだよ」と言っていたが「佐々木と木村は違うのではないの」と口答えして、えらく怒られたことを思い出す。
杜父魚文庫
9925 古沢は赤松、木村は佐々木 古沢襄

コメント