9931 北朝鮮の穀倉地帯で餓死者が出るワケ  古沢襄

北朝鮮の穀倉地帯で毎年、数千人の餓死者が出ていると、考えられない状態が続いている。この不可思議な構造について韓国の朝鮮日報が詳しくレポートした。農作物を管理していた脱北者の証言である。
この証言によると「農地が共同農場しかない平野では、里(行政区域)ごとに毎年30-40人が餓死している。収穫した穀物は全て取り上げられるからだ」という。収穫した穀物の全ては権力機関や軍が持ち去るため、農民の手元にはほとんど残らない。
収穫された穀物はまず金正恩親衛隊といわれる護衛総局が持ち去り、続いて対南工作機関や保衛部、その次に軍の手に渡る。そのため、軍の厳しい監視の中でも農民たちは穀物を盗む構造が生まれる。
これで、農民暴動が起こらないのが不思議だが、先軍政治の北朝鮮では軍警が想像できないような農民弾圧をしているのだろう。
<北朝鮮の穀倉地帯とされる黄海南道で、毎年数千人の住民が餓死しているとの証言が出ている。黄海南道海州市の人民委員会(市庁に相当)で農作物の管理を担当し、昨年夏に脱北したチェ・ヨンチョルさん(仮名)=45=は18日、北朝鮮改革放送とのインタビューに応じ「山奥の村なら焼き畑でもできるが、農地が共同農場しかない平野では、里(行政区域)ごとに毎年30-40人が餓死している。収穫した穀物は全て取り上げられるからだ」と証言した。
今年4月に日本の東京新聞は「金正日(キム・ジョンイル)総書記の死去後、黄海南道で2万人が餓死した」と報じた。チェさんは「農民は収穫期に穀物を盗まなければ、餓死する以外にない。これが黄海南道の現実だ」とも話した。これは今年に限った話ではなく、毎年繰り返されている構造的な問題だという。チェさんは「(今年に入って)北朝鮮当局は農民が隠した穀物を必死になって探しているようだ」と語った。
チェさんによると、春になると黄海南道の各農家に配布される「穀物生産計画」がこの地域で深刻になっている飢餓問題の原因だという。北朝鮮当局は毎年この地域の共同農場に「1町歩(約1万平方メートル)当たり6トンを生産すること。うち2トンは農場作業員に与える」との指示を下す。ところが実際の収穫量は1町歩当たり2トンから4トンほどで、指示された目標は最初から実現が不可能だ。また収穫した穀物の全ては権力機関や軍が持ち去るため、農民の手元にはほとんど残らない。
収穫された穀物はまず金正恩(キム・ジョンウン)氏の親衛隊といわれる護衛総局が持ち去り、続いて対南工作機関や保衛部、その次に軍の手に渡るという。
そのため、軍の厳しい監視の中でも農民たちは穀物を盗む。もしそうでもしなければ1年を食料なしに過ごさねばならないからだ。このように農民が盗み出す食料は1町歩当たり1.5トンから2トンほどで、収穫量全体のおよそ半分に相当する。
もちろん北朝鮮当局もこのような実情を把握しているため、さまざまな検査を行って農民が隠した食料の30%を回収する。そのため黄海南道では毎年5000-7000人の餓死者が発生するという。(朝鮮日報)>
杜父魚文庫

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