9952 肉を斬らせて骨を断つ  古沢襄

ここにきて野田首相と民主党の輿石幹事長の間に足並みの乱れがみれる。22日、野田・輿石会談が行われたが、会談を終えた輿石氏は終始、不機嫌な面持ちだった。
会談内容は明らかにされていないが、輿石氏は小沢グループが消費増税法案に反対票を投じても、党の統一と団結を守るために処分をしないように求めた可能性が高い。野田首相は党議拘束がかかった案件で反対票を投じたら除籍処分を行う筋論を主張したのであろう。
官邸筋の読みでは反対票を投じる造反議員は40人前後、本会議を欠席する議員は20人前後と踏んでいる。輿石氏の読みは造反が70~80人に及ぶ。そうなれば、野党が内閣不信任案を提出すれば可決され、野田首相は解散権を行使する事態になりかねない。
ここは消費増税法案の成立で野田首相の顔を立て、造反は”処分せず”で小沢グループの離党を防ぐという輿石流の妥協策で当面の危機を乗り切る腹でいるのだろう。
だが、この妥協に乗れば野田首相の指導力は確実に低下する。首相を支える前原政調会長、藤村官房長官、仙谷政調会長代理、藤井党税制調査会長には乗れない相談となる。むしろ40人規模の造反なら、除籍処分にして党内から小沢色を払拭したい主戦論の方が強い。
しかし輿石幹事長にしてみれば、参院でも10人前後の小沢グループが造反の動きをみせているので、参院議員会長の立場からすれば、足元を脅かされる事態となっている。輿石氏は「党側がかなり緊張しているということを踏まえ、官邸側としても、いろいろな行動をとってもらいたい」と会談後、述べた。
何をいまさらという気がするが、野田首相の切り札は自民党との”話し合い解散”に絞られてきた。選挙で民主党は数を減らすという肉を斬られるが、獅子身中の虫となった小沢グループの骨を断つ気持ちに駆られているのではないか。
<野田総理大臣と民主党の輿石幹事長が会談し、輿石幹事長は小沢元代表が消費税率引き上げ法案に反対する意向を明確にしたことを受けて党内は緊迫した状況にあるとして、政府側にも一層の努力を求めました。
民主党の小沢元代表が、消費税率引き上げ法案の採決で反対したうえで、離党することも検討する考えを示したことについて、野田総理大臣に近い政権幹部からは、「採決で反対した議員は当然、除籍だ」などと、小沢氏らをけん制する意見が出ています。
こうしたなか輿石幹事長は、22日午後、総理大臣官邸で野田総理大臣と会談し、「党側がかなり緊張しているということを踏まえ、官邸側としても、いろいろな行動をとってもらいたい」と述べ、党が分裂することがないよう政府側にも一層の努力を求めました。(NHK)>
<民主党の小沢一郎元代表は22日、消費増税を含む社会保障と税の一体改革関連法案の衆院採決で反対した後、党執行部の処分を待たずに離党し、新党を旗揚げすることも視野に対応の検討に入った。小沢氏らは、与党が衆院で半数割れする「反対54人」の確保に全力を挙げている。消費増税を推進する野田政権との決別を明確にすることで、「反増税」の立場をアピールする狙いとみられる。
小沢氏は22日、都内のホテルで自身を支持する議員ら約20人と会合を開き、改めて結束を確認。小沢氏は「われわれの主張は正義だ」と強調した。また、26日に行われる見通しの衆院での関連法案採決を前に、各自が週末に地元に帰り、離党覚悟での反増税の主張に理解を求めることを申し合わせた。 
採決で反対票を投じた後の対応について、小沢グループ幹部の東祥三前内閣府副大臣は22日のTBSの番組で「そういう行動を取るのだから、離党する準備はしている。当たり前だ」と述べ、執行部の対応にかかわらず離党する可能性に言及した。執行部は、反対者には除籍(除名)を含む厳しい処分で臨む方針だが、小沢氏は増税反対について「処分とは別次元の話だ」としている。
小沢氏は次期衆院選をにらみ、採決で反対した後の新党結成を視野に入れており、同調者から署名入りの離党届を集めている。21日の会合に集まった49人のうち、大半が署名を提出した。
これに対し、執行部や増税推進派は造反封じへの説得工作を続けている。前原誠司政調会長は22日、仙谷由人政調会長代行と会い、中間派の議員に電話で賛成を働き掛けることを確認。民主党最大の支援団体である連合が消費増税路線を支持していることから、執行部は連合の地方組織を通じた反対派切り崩しにも力を入れている。(時事)>
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