9958 日本が自由貿易から取り残される 古森義久

アジア太平洋地域の自由貿易を拡大するTPPに野田政権が背を向けつつあります。その間にカナダやメキシコが積極的にこの取り決めへの加盟する意思を表明しています。
<<【主張】TPP交渉 置き去りの危機自覚せよ>>
野田佳彦首相は、アジア太平洋地域における自由貿易の枠組みづくりから取り残されても構わないと考えているのか。
20カ国・地域(G20)首脳会議に出席したメキシコとカナダが環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉への参加を表明した。一方の日本は、首相が現地でオバマ米大統領と交渉参加への事前協議で協力を確認しただけだ。動きの鈍さ、危機感の乏しさが際立つ。
もともとメキシコとカナダがTPPに前向きになったのは、日本の交渉参加の動きに刺激されたからだ。それが逆転し、日本は両国の後塵(こうじん)を拝す形になった。
野田首相が交渉参加表明の機会を逃したのは、4月の日米首脳会談、5月の主要国(G8)首脳会議に続き、実に3回目だ。
4月の日米会談前に首相は「議論が煮詰まって判断する」と話していた。その後も状況は変わらず議論を進める動きもない。税と社会保障の一体改革に力を注ぐあまり、TPPは脇に置かれているとみられても仕方あるまい。
今回、G20首脳宣言は「世界経済の強固で持続可能な均衡ある成長」を最優先事項と位置づけ「開かれた貿易や市場拡大、保護主義抑止」を強調した。欧州 危機を世界経済危機に拡大させないとの決意表明だ。日本にとってはTPPに参加することで、アジア太平洋地域の潜在的な成長力を取り込むことを意味してい る。
TPPには同地域の中国による経済支配を阻む目的もある。この視点に立つと、日本がTPPに慎重姿勢を取る一方、中国、韓国と3カ国自由貿易協定 (FTA)の年内交渉開始で合意しているのはいかにも危うい。3カ国交渉が先行すると、TPPを警戒し、くさびを打ち込みたい中国の術中にはまることにも なりかねない。
メキシコとカナダの参加表明で、9月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせて交渉が本格化する可能性が出てきた。日本の参加表明がなおも遅れれば、ルール策定で日本の主張が入る余地はなくなる。ぎりぎりのところまで来ているのだ。
野田首相は首脳会議2日目の協議に参加せず、帰国した。一体改革論議が大詰めを迎えているからだ。この判断にやむを得ぬ面はあるにせよ、国内政局に目を奪われている間も世界は動いている。その現実を忘れてはならない。
杜父魚文庫

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