中国の軍拡がアメリカのアジア戦略を浸食しているという報告の続きです。
その報告の主眼は、いまや米国はアジアで危機に直面しているという警告である。上記の従来のアジア戦略ではその目的も機能も達せられないというのだ。深刻な事態の解説である。
この報告は「アジアの均衡=米国のアジア軍事戦略の変容」と題する政策提言である。ワシントンの大手研究機関「AEI」(アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート)が6月に作成した。
作成者は、歴代政権の国防戦略を担当してきたトーマス・マンケン元国防次官補代理を中心に、ダン・ブルーメンソール元国防総省中国部長、トーマス・ドナリー元下院軍事委員会首席補佐官ら合計6人の専門家である。
AEIは共和党寄りのシンクタンクだが、同報告の作成にあたった専門家たちはみな政権の内部で防衛政策の形成に関わってきた点が共通している。
同報告は、年来の米国のアジア戦略がもはや意図どおりの機能を期待できなくなった歴史的な変容の原因として、次のように述べていた。
「複数要因の脅威が、アジアの安定への米国の誓約を浸食し始めた。中でも最も重大なのは、中国の軍事近代化を中心とするパワーの拡大である。中国 のパワー拡大は、米国にとって死活的に重要な利益の領域への接近路を阻むだけでなく、過去半世紀以上、アジア地域の安定の基盤となってきたいくつかの同盟関係を骨抜きにする脅威となる」
同報告は第2の脅威として北朝鮮を挙げていた。そして興味あることに、第3の脅威は米国自身の国防費の大幅削減だとしていた。
だが、突出して巨大な変化要因は、やはり中国軍の軍事近代化、つまり大規模な軍拡なのである。
<米軍の動きを封じ込める中国の軍拡>
この報告は、中国の軍拡が米国のアジア戦略を変えてしまう具体的な領域として以下を挙げていた。その記述をまとめてみよう。(つづく)
杜父魚文庫
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