9992 野田の勝ちだ、きっぱりと小沢を切れ 杉浦正章

この勝負は首相・野田佳彦が勝った。なぜなら民主党元代表・小沢一郎の離党者は数が増えず、野田政権を「少数与党」に追い込む手立てはなくなったからだ。
もう野田は小沢とはきっぱりと袂を分かち、自民、公明両党との部分連合を推進するしか道はない。その道の先には解散・総選挙が待っているが、「小沢切り」が助け船となる。
なぜなら民主党政権支持率減少の99%を担っていた“元凶”小沢を取り除いたうえで、総選挙に臨めるからだ。消費増税法案を片づけ、小沢も片づけた野田のイメージはすっきりして、支持率も好転しよう。
 
政局は透徹した目で見なければならない。最初から指摘しているように小沢の動きに目くらませを受けてはならないのだ。28日も小沢がちょろちょろと出張って輿石と2度も会談、最後には「民主党の枠を越えて国民との約束を実行すべきとの思いを直接国民に訴えねばならない」と離党して選挙で勝負する構えを見せた。
しかし、この場面に到っては迫力はない。「どうぞどうぞ離党してください」と言っても大丈夫な状況になってきた。なぜなら26日の反対投票直後には43人が集まった離党志向の衆院議員らが、28日は35人しか集まらなかった。
どうあがいても離党の衆院議員は40人規模がいいところだ。54人の離党で民主党政権を少数与党に追い込むという「切り札」は、たとえ「離党しない」と言っているルーピー鳩山由紀夫がまたまた転んでも足りないし、方向転換は出来そうもないのだ。小沢戦略は崩れたのが現実だ。
加えて「直接国民に訴える」と小沢が言っても、国民はそっぽを向くだろう。朝日、共同に続いて読売の世論調査でも、小沢新党に期待しない人は、民主支持層で82%、自民支持層と無党派層では各78%に上った。
国民はもう小沢の口癖である「国民の生活が第一」などは信用しない。家庭の主婦でも最近はテレビの耳学問が発達していて「何言ってんのよ。自分の選挙が第一のくせに」といった反応を示す。
つまり「ともかく増税に反対すれば選挙で有利になる」という小沢の判断は、国民が読み切っていて、甘いのだ。菅直人が政治家になって初めていいことを言っている。ブログでチルドレンに「小沢グループと呼ばれている皆さん、小沢氏の個利個略のために、駒として利用されることがないように、目を覚ましてほしい」と訴えているのだ。
加えて国会審議をめぐる環境も好転し始めた。昨日は自民党が小沢の造反を「3党合意への造反だ」と難癖をつけていることに対して、筆者は「自民党よ、おごるな」と筆誅を加えたが、急旋回した。
自民党の参院国対委員長・脇雅史は「民主党の造反者への処分を待っていては参院の審議は進まない。逆に審議しない口実に使われる可能性すらある」として、処分に左右されずに審議入りをする方針を明らかにした。
自民党総裁・谷垣禎一も同様の方針を述べた。それはそうだろう。よく考えてみれば自民党にとって「話し合い解散」を勝ち取るためには、消費増税法案の審議を促進させて早期に成立を図る必要があるのだ。
遅らせば遅らせるほど、あわよくば継続審議を狙う幹事長・輿石東が喜ぶだけだ。野田にとっては、「解散のツケ」が後からどっと押し寄せることになるが、背に腹は代えられない。当面をしのぐには何よりの“援軍”なのだ。
こうして対小沢戦に野田は勝ったと言える状況となった。野田にとって今やるべきことは、小沢の説得などはあきらめて、毅然とした態度を小沢に対して示すことだ。切るなら、ヘビの生殺しではなく、きっぱりと切ることだ。政治的には絶好のチャンスとなるからだ。
なぜなら、幸いにも世論の判断は、虚偽のマニフェストの元凶は小沢であり、「皆小沢が皆やった」ということになってきているからだ。たしかに小沢が「あれも入れちゃえ、これも入れちゃえ」と票になりそうな話ばかりを盛り込み、しまいには「政権を取れば16・8兆円くらいどうにでもなる」と宣うたのだから、ここは全部小沢のせいにしてしまうことが可能だ。
さらに言えば、最近にない巨額の政治資金をめぐる疑惑を小沢1人が抱えてくれていることも重要だ。刑事被告人の小沢が党内でのさばり、1人で民主党のイメージを落とし続けて来たのだ。
この小沢を切れば、野田の真摯でクリーンな立ち姿とも相まって、党のイメージは好転する。場合によっては民主党が率先して小沢の証人喚問を実現することが正しい。与野党一致で証人喚問の構図が出来るのだ。
小沢が消費税を選挙に“活用”するなら、野田は小沢を選挙に“活用”すればよいのだ。野田は側近に「いずれにしても参院がねじれている。自公との部分連合しかない」と漏らしているが、たしかにこれしかない。
杜父魚文庫

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