9994 小沢・輿石会談 無茶な要求には付き合えない  古沢襄

「小沢がどうだ」「輿石がこうだ」という片々たる情報を取材する段階は、すでに越えている。いまの国会の停滞を各新聞はどう見ているのか、という主張を世論に向かって問いかける時期にある。
その意味で読売新聞の論説は時宜を得たものだと思う。
輿石幹事長はTBS番組で、小沢一郎元代表が離党届を提出した場合に「預かっておく方法もある」と述べ、離党を認めず保留することもあり得るとの考えを示した。何と小手先の策だろうか。
<「離党カード」をちらつかせ、理不尽な要求を突きつける――。まさに「壊し屋」らしい手法だが、民主党執行部は断固拒否すべきだ。
民主党の小沢一郎元代表が輿石幹事長と3回にわたり会談し、社会保障・税一体改革関連法案を参院で採決、成立させるなら、自らのグループを率いて集団離党する考えを伝えた。
輿石氏は、翻意を求め、調整が続いている。小沢氏は週明けには結論を出したい意向という。
小沢氏の要求は、法案成立に政治生命を懸ける野田首相が到底容認できない、無茶なものだ。
問題なのは、輿石氏が、党分裂を回避しようと、何らかの妥協を検討していることである。
関連法案は、民主、自民、公明の3党合意に基づき、修正された。3党合意は、各党が譲り合ってまとめたもので、極めて重い。
小沢氏らが法案の衆院採決で反対したことは、3党合意への造反を意味し、自民、公明両党は強く反発している。それなのに、小沢氏を懐柔するために、民主党執行部が妥協するのは本末転倒だ。
小沢氏らの造反は、党執行部が「党内融和」の名の下、深刻な路線対立に目をつぶり、糊塗(こと)してきたツケにほかならない。党内の亀裂は、もはや修復不能である。
輿石氏が今すべきは、小沢氏に厳しい処分を下すことだ。
そもそも民主党の政権公約(マニフェスト)に固執し、「国民との約束を実行する」との小沢氏の主張には、正当性がない。
政権交代後、2年10か月近くになる。年間16・8兆円の財源捻出が可能としたマニフェストは完全に破綻している。小沢氏自身、幹事長を8か月以上務めながら、公約実現に動いた形跡はない。
今になって、「増税の前にやるべきことがある」「民主党は政権交代の原点に戻れ」などと唱えても、説得力のある行政改革や景気改善の具体策を明示しなければ、信用できるはずがない。
小沢氏は19年前に自民党を離党して以来、新生、新進、自由の各党の結成・解散を繰り返した後、民主党に合流した。政策より政局を重視する、強引で独善的な政治手法や、金権体質を今も引きずっている。
2006年4月、小沢氏は民主党代表に就任する際、「まず私自身が変わらなければならない」と大見えを切った。
だが、今回の離党に向けた動きは、小沢流の政治が何ら変わっていないことを裏付けている。(読売・社説)
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