オバマ政権は明らかに中国の軍拡への強固な抑止が必要だと考えるにいたりました。中国の軍事拡張を脅威とはっきりみなすからでしょう。
しかしオバマ大統領は「中国」の名をあげて、その軍事脅威を指摘することをためらっています。複雑で屈折した対応なのです。
もっともオバマ政権全体でも国防総省や軍部自体は中国の軍事脅威を明確に認めています。そのへんの報告を続けます。
<<対中戦争のシナリオを描く米国国防総省>>
しかし奇妙なことに、その後、この「空海戦闘」はオバマ政権としての公式な決定とはまだ見なされていないと発表された。中国への配慮のほかに、その種の軍事戦略能力を新たに築くための財政能力が疑問視されるという現実があることもその理由だろう。
巨額の財政赤字に悩むオバマ政権は、予算管理法という法律で赤字削減を自らに義務づけ、国防総省予算を今後10年で最低4870億ドル削ることになっている。だから空海戦闘でもどこまで予算が取れるか分からないわけだ。
<<「中国への攻撃能力を向上させよ」とAEIが政策提言>>
さて、オバマ政権側がこのような不明瞭な姿勢を続ける中、アジア安全保障政策に関わってきたワシントンの専門家集団がより明確なアジア戦略を提唱した。前回の報告で紹介したワシントンの大手研究機関「AEI」(アメリカン・エンタープライズ・インスティテュート)の政策提言報告である。
この報告は「アジアの均衡=米国のアジア軍事戦略の変容」と題されていた。作成者は歴代政権の国防戦略を担当してきたトーマス・マンケン元国防次官補代理をはじめ、ダン・ブルーメンソール元国防総省中国部長、トーマス・ドナリー元下院軍事委員会首席補佐官ら合計6人の専門家だった。AEIは共和党寄りのシンクタンクだが、同報告の作成にあたった専門家たちはみな政権の内部で防衛政策の形成に関わってきた点が共通している。
この報告は、中国の大軍拡に押され気味の米国が取るべき対策の基本として、「平時には中国との長期間の軍事競合を続け、有事には中国に地域的な戦争での早期の勝利は決して得られないことを認識させる」ことを強調していた。
そのうえで具体的には、主に以下のような軍事関連手段を取ることを提唱するのだった。(つづく)
杜父魚文庫
10030 オバマ大統領の中国へのためらい 古森義久

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