10118 新潮45の政治家特集記事にインスパイアされた件 阿比留瑠比

今朝の産経政治面には、鳩山由紀夫元首相と菅直人前首相の似顔絵付きで、「『脱原発』仲良く吠えた」という記事が載っていました。特に鳩山氏については、首相官邸前で毎週金曜日に行われている関西電力大飯原発3、4号機の再稼働に反対するデモに飛び入りし、マイクを握って連帯を訴えて首相官邸に突入したものの、九州の豪雨被害視察で不在の野田佳彦首相には会えなかったというオチがついています。
まあ、天災は政権交代すれば治まると述べていた菅氏と同様、鳩山氏にとっても九州北部の豪雨による大きな被害など眼中になかったのでしょうね。野田首相がこの日、被災地へ行くことはきちんと報じられていましたし、鳩山氏も野田首相がいないことは知っていたようですが、自身がいかに目立ち、脱原発派の有権者にいかにアピールするかのパフォーマンス効果しか考えていない鳩山氏にとっては、最初からどうでもよかったのでしょう。
ちなみに、鳩山氏はデモの群衆に対し、こう語りかけました。鳩山氏と「思いを同じくする」と言われた脱原発派の人たちが、気の毒にすら感じます。だって、あの鳩山氏と同じなら、とにかく「ろくなものではない」「まともではない」と判断されてしまいますからね……。こんなのと一緒にされたらと心より同情します。
《お集まりのみなさん。ごくろうさまでございます。私は鳩山由紀夫でございます。皆様方と思いを同じくする立場から発言させていただきたい。
私は、みなさんの新しい民主主義の流れをとても大事しなければならないと思っています。皆さんの声をもっともっと政治に反映させていかなければならないと思っています。私もかつて官邸におりました。官邸と国民のみなさんの声をもっと近づけたいと思っていたが、国民の声が官邸の壁が厚くて聞こえなくなってしまいました。私もおおいに反省しています。
今の官邸と国民、皆さんの声があまりにもかけ離れてしまっていると残念でなりません。総理を経験した、官邸にいた者としてみなさま方の声を官邸に伝え、政治の流れを変える役割を果たさなければならないと思ってやって参りました。
これから、皆さん方の声をおうかがいして、私1人が官邸の中に……したいと思っています。皆さんの声をぜひ伝えたいと思っていますので、ぜひよろしくお願いします。ぜひ、この時点での再稼働を……その声を伝えるために、みなさんの声を伝えるために、これから官邸の中に乗り込んで、総理はおられないようでありますので、官房長官に皆さんの声を……どうかよろしくお願いします。》
鳩山氏は首相就任直後の国連総会で、温室効果ガス削減目標について「1990年比で2020年までに25%削減することを目指す」という中期目標(鳩山イニシアティブ)を発表し、いまだに取り下げていません。首相在任中も退任後も、菅氏と競うようにしてベトナムなどへの原発輸出ビジネスに取り組んでもいました。まあ、この人の言動の矛盾をいくら指摘しても、ご本人は馬耳東風、糠に釘なので詮なきことではありますが……。
で、話は飛ぶのですが、私は先日のエントリで、政治家批判にも疲れたという趣旨の愚痴をこぼしました。記者なんて、批判が仕事のような部分もあるのですが、他者に対する批判の何割かは自分自身に跳ね返ってくるものであり、そうした作業を重ねるにつれ、少しずつ精神バランスが崩れていくのが自分でも分かるような気がしたからです。
そんなときに、月刊「新潮45」の7月号の特集記事「落選させたい政治家12人」と8月号の「この絶望的な政治家たち」に続けて記事を書かせてもらう機会がありました。そこで私以外の人が、それぞれの対象である政治家たちについて非常に手厳しく、ここまで書いていいのかというぐらい冷徹に突き放してぼろくそに書いているのを読み、ああ自分はまだまだ甘かったと思い直した次第です。
政治家批判の表現については、民主党政権になってからその余りの低劣さ、愚劣さに、書き手の自己抑制のたがが外れ、何でもありになっているような印象もあります。自民党政権時代とはどこか批判の質、対象、中身が根本的に異なっていると。ともあれ、そこまで踏み込んで彼らの腐れ外道ぶりを明快に指摘している記事の数々を読んで、私も批判疲れなんてしている場合ではないと反省しました。以下、きりがないので鳩菅に絞っていくつか引用して紹介します。
【7月号】
菅氏について ノンフィクション作家の保阪正康氏《私は市民運動に詳しいわけではないので、あっさり言ってのけることになるが、こんな人物しか生み出すことができなかったのであれば、市民運動とは何と歪んだ世界なのだろうと実感する》《日本は少し舵とりを誤れば市民運動出身の権力至上主義者が登場して、麗句と恫喝、そして自己陶酔でこの国の基本的な骨格をがたがたにするのだなとも思い至った》《とにかく自分の思うとおりにならないとどなる、わめく、すごむ、権力の威を借る人物》《私がここでも驚いたのは、事故調査委員会でまたぞろ脱原発を訴えるという、麗句を用いて、自らの責任を回避しようとするその姿勢にあった。
この委員会では事故の調査を正面から検討するのが目的であり、脱原発とか非原発という持論(自らの変節を巧みに弁解する論法なのだが)を主張するのはまた違う場面で行わなければならないのに、そのことにも気づいていない(いやいや気づいていて巧みに責任のがれをすることによって、ひととき権力機構から身を遠ざけようとする戦略かもしれない)》
鳩山氏について 文芸評論家の福田和也氏《落選させたい、なんてもんじゃないね、此奴は。抹殺、でもすまないくらい。それほど、酷い、非道い、ヒドイ、と変換の限りを尽くさざるを得ないほどにシドイ。総理としてとか、政治家としてとか、そういった、一般的な水準と、数億光年離れたところで非道い。》《怖気をふるいたくなるような不気味さというか、ノメリとする、触るどころか視野に入ってくるだけで恐ろしい、というような感じがする》《落選じゃなく、引退でもなく、ただただ消えてほしい、いなくなってほしい。あるいは「史上最低の総理」として、国会議事堂に晒しますかね》
【8月号】
菅氏について 作家・哲学者の適菜収氏《菅直人は、自著で独裁と反文明主義を賛美する狂人でした。自身の資金管理団体がパチンコ屋を経営する在日韓国人から違法献金を受けていたことが発覚するものの、東日本大震災と福島第一原子力発電所事故の対応を口実に総理の座にしがみつき、わが国を地獄の底に突き落とした》
評論家の遠藤浩一氏《詭弁を弄することには長けているけれども、国のトップとしては怒鳴り散らすことにしか知らなかった菅直人前首相》
鳩山氏について コラムニストの小田嶋隆氏《私の目には、バブル崩壊からこっちの20年、相次いで現れる代わり映えのしない自民党のリーダーたちが、打席に立つやバントばかりしている、世にも消極的なバッターに見えていた。
だから、新しい若いスラッガーには、結果は三振でもかまわないから、思い切りバットを振ってほしいと考えたのだ。で、鳩山さんは、見事に三振したのだと、私はそう解釈していた。が、事態は、より悲惨だった。新たに打席に立ったバッターは、ボールが来てもいないのにバットを振り、打席と関係のないところでボールを追い掛け回し、さらには、そのまま一塁に歩き出してタッチアウトになっていた。要するに、彼は、野球のルールすらわかっていなかった》
適菜収氏《鳩山由紀夫は首相に就任すると、「歴史を変えるのはわくわくする」「日本の歴史が変わると思うと身震いする」と述べました。その言葉通り、身震いするような事態が続発します。鳩山はオモチャを与えられた幼児のように、わが国を振り回し、最後には放り投げた。米軍普天間基地の県外移転騒動により日米関係を悪化させ、沖縄県民を二重三重に陵辱した挙句、「国民が聞く耳を持たなくなった」と責任を国民に転嫁しました》
鳩菅両氏についてではありませんが、適菜氏はこんなことも書いています。賛否が分かれるところかもしれませんが、リスクもあるだろうに、ここまで言い切る勇気と覚悟にはある種の感銘を受けました。
《たとえば原口一博という議員の顔を思い浮かべてほしい。あんなクレヨンで描いたような顔が信用できるわけないでしょう。同じ町内に住んでいたら誰もが警戒する顔です》《卑劣な人間は卑劣な顔をしているし、悪人は悪人顔をしているし、山岡賢次は詐欺師のような顔をしている》《輿石東から仙谷由人、菅直人にいたるまで民主党にいるのは横縞の囚人服が似合うような人々です》
……まあ、私自身も菅氏が首相時代、記者会見などであの顔を見るたびに、何が詰まっているのだか無意味に広い額に「恥」という文字がくっきりと浮き出ているように思えて仕方がありませんでしたが……。いずれにしろ、私も覚悟を決めて「お前は何様だ」と言われることは甘受しつつ、批判すべき対象は徹底的に批判するしかないのだろうと改めて思ったのでした。
杜父魚文庫

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