七月もあと僅か。野田首相が「政治生命を懸ける」と明言した社会保障・税一体改革関連法案は八月の旧盆前後には成立するだろう。それから九月八日の会期末までに一票の格差が違憲状態という最高裁判決に従って「0増5減」案だけは成立させねばならない。山梨、福井、徳島、高知、佐賀各県の小選挙区が5減の対象になる。比例代表定数を80議席削るという輿石幹事長案は日の目をみないだろう。
参院自民党の中には会期末までに衆院で内閣不信任案を提出して野田内閣を解散に追い込む強硬論があるやに聞いているが、まずは実現が難しい。自民党内が倒閣で一致していないからである。結局は野田再選、谷垣総裁も再選の方向にある。
<「ポスト野田」有力候補である民主党の前原誠司政調会長、玄葉光一郎外相が9月の党代表選で野田佳彦首相を支持する考えを相次いで表明したことにより、首相の代表再選は確実となった。ただ、首相は、自らが「政治生命を懸ける」と明言した社会保障・税一体改革関連法案の衆院採決で党分裂を招いたことへの責任を痛感しているのも確か。どうけじめをつけるのか。今国会会期末(9月8日)に向け、進退をめぐり首相の心は揺れている。(加納宏幸)
前原氏、玄葉氏に加え、細野豪志環境相も出馬を否定。岡田克也副総理は首相の再選を支持する公算が大きい。「国民の生活が第一」の小沢一郎代表らの大量離党により反首相勢力は激減した。鳩山由紀夫元首相が対抗馬擁立を明言したところで馬淵澄夫元国土交通相や小沢鋭仁元環境相くらいしか見当たらない。
民主党最大の支持団体である連合の古賀伸明会長も24日夜のBSフジ番組で「5年で6人の首相が誕生した政治はよくない。続けるべきだ」と首相の再選を支持した。もはや首相再選を阻むのは難しい。
とはいえ、首相の胸中は複雑だ。6月以降の離党者は衆院41人、参院16人の計57人。衆院で民主党は250人で過半数割れ目前となった。首相は24日の参院予算委員会でも「多くの離党者が出たことを党代表として深く反省をしなければいけない。責任の重さを痛感している」と語った。
もちろん再選への意欲は十分ある。沖縄・尖閣諸島の国有化、集団的自衛権行使の政府解釈変更-などの政治課題を次々と掲げたのはその証左だといえる。
「積極的にいろんなことを言いなさんな。九仞(きゅうじん)の功を一簣(いっき)に虧(か)く。消費税1本に絞りなさい」
後見役の藤井裕久党税制調査会長は23日、「事が成就する目前に油断で失敗することがある」とのことわざを引き首相を諭した。再選への楽観論が広がれば、思わぬ反発を呼び、一体改革法案を成立させられないどころか、衆院で内閣不信任決議案が可決する事態さえ招きかねないからだ。
それでも楽観ムードは広がる。輿石東幹事長は参院民主党役員会で「代表選は自民党総裁選より前の方でよいのではないか。重なると埋没する」と代表選前倒しを提案した。先手を打って注目を集め、支持率アップを図ろうという薄っぺらな計算が透けてみえる。
そんな中、首相周辺には会期末での退陣を勧める声もある。代表に再選され、衆院選に突入すれば、民主党は歴史的な大敗を喫する可能性がある。そうなれば敗軍の将として政治生命を絶たれるからだ。
「欲張るな。消費税増税ができただけでも大したもんだ。その後の身の処し方は潔くしろ!」
首相の古くからの相談役は、一体改革法案の成立後の速やかな退陣を促した。首相は黙って聞いていたというが、選択肢の一つとして心に留めているはずだ。(産経)>
<民主党は24日、当選回数ごとに衆参両院の議員を集めて党執行部と意見交換する「期別懇談会」をスタートさせた。
党の結束を求め、社会保障・税一体改革関連法案の衆院採決後、離党者が相次ぐ事態を食い止める狙いがあるが、効果は未知数だ。
懇談会初日の24日夜は、都内のホテルに当選1回の衆院議員十数人が集まった。輿石幹事長は「希望を持ってやろう。しっかり2013年度予算案を作らなければならない」と呼びかけた。出席議員が1人ずつ発言し、輿石氏はメモを取りながら丁寧に感想を述べたという。輿石氏は別のホテルで当選2回生とも懇談した。
懇談会は、当選1回から同4回までの衆院議員を対象に、8月2日まで計8回行う計画だ。参院議員の期別懇は7月末から行う方向になっている。一体改革関連法案の衆院採決で造反し、処分を受けた議員にも出席を求めている。
期別懇で結束を図る手法は、小沢一郎氏が民主党代表時代、よく採用した。今回の懇談会は、かつて党役員室長として小沢氏に仕えた奥村展三文部科学副大臣が、党執行部や政府に「政権の危機だ。首相官邸にも、党にも本当の情報が入っていない」として、開催を進言したという。(読売)
杜父魚文庫
コメント