韓国の朝鮮日報は、ここにきて朝鮮人民軍の李英鎬(リ・ヨンホ)前総参謀長が失脚した真相について、スクープを連発している。韓国国家情報院からキャッチした情報であろう。
国家情報院は韓国の国家安全保障に係わる情報・保安及び犯罪捜査などに関する事務を担当するために大統領直属で設置された情報機関。
悪名高きKCIA(韓国中央情報部)が国家安全企画部に改組されてから、韓国の情報活動が低下しているといわれている。今回の国家情報院の北朝鮮情報が正しければ、情報活動がこれまでより強化された証となる。
<北朝鮮の李英鎬(リ・ヨンホ)前総参謀長=次帥=(70)が突然更迭されたのは、演習中に勝手に軍部隊を平壌郊外に移動させた上、自宅から現金数十万ドル(数千万円)が発見されたことが理由とみられることが26日までに分かった。
李前総参謀長は、今年春の軍事演習中に軍部隊を平壌郊外に移動させ、対立する張成沢(チャン・ソンテク)労働党行政部長、崔竜海(チェ・リョンヘ)軍総政治局長らによる集中的な非難とけん制を受けてきたという。
崔総政治局長は、内偵を進めた際、李前総参謀長の自宅から現金数十万ドルを発見し、不正の疑いを追及したとされる。外貨獲得事業の70%を占めていた北朝鮮軍部は、内閣に事業権の相当部分を奪われ、李前総参謀長を中心に強い不満を示し、張成沢派にけん制の口実を与えたとみられる。
韓国国家情報院も同日、国会情報委員会で「李前総参謀長の解任は、金正恩(キム・ジョンウン)党第1書記が軍に対する統制を強化する過程で、李前総参謀長が非協力的な態度を取ったことに対する責任を問う人事ではないか」と分析した。
国家情報院は「李前総参謀長の非協力的な態度とは、勝手に軍部隊を移動したこと、軍の世代交代や軍部の外貨獲得事業を内閣に移管されたことに不満を表明したことなどを指す」と説明した。
国家情報院はまた、北朝鮮では金正恩氏の指示で「経済管理方式再編」に向けた作業チームが設置、運営され、協同農場の分組(農作業の最小単位)の人数縮小、企業の経営自主権拡大、党・軍が独占していた経済事業の内閣への移管、勤労者の賃金引き上げなどの経済改善策が実施されていると指摘した。ただ、同院は「金正恩氏は、社会主義原則の固守というガイドラインを示しており、根本的な改革開放は期待しにくい」との見方を示した。北朝鮮に変化の兆しは見えるが、本格的な改革開放に乗り出したと見なすにはまだ早いとの見方だ。
国家情報院は「金正恩氏の声や発想法は、(祖父の)金日成(キム・イルソン)主席と90%ほど似ている」と指摘する。金正恩氏はダブルボタンのコートを着用し、中折れ帽をかぶり、後ろ手で歩く姿まで金日成主席をまねている。今年4月に金正恩氏が金日成主席生誕100周年の行事で演説した際、右手の人差し指で線を描くような動作をした。これは金日成主席が過去の演説でよく見せたしぐさだ。
国家情報院は「金正恩氏が活発な現地指導と大衆向け演説、政策指示などにより、独自の指導スタイルを示そうとしているが、政治的な経験と北朝鮮の現実に対する認識の不足で非現実的な指示を下したり、矛盾する政策を推進したりする例が見られる」とも指摘した。
このほか、叔母に当たる金敬姫(キム・ギョンヒ)氏が金正恩氏の精神的な支えとなっているほか、金敬姫氏の夫の張成沢氏も政策助言を行うなど、親族が金正恩氏の後見人としての役割を強化しているという。国会情報委のある委員は「北朝鮮幹部は金正恩氏が北朝鮮の体制と現実を知らないままに下す指示が多く、不満を抱いているとの報告が国家情報院からあった」と語った。
今年に入り、金正恩氏は開放の動きを一部見せているが、住民監視、粛清に関しては何も変わっていない。国家情報院は同日「体制不安を防ぐため、国家安全保衛部の権限を拡大し、住民に対する統制を強化しており、後継者として内定して以降、朴南基(パク・ナムギ)党計画財政部長の銃殺など幹部約20人を粛清した。25年も空席になっていた国家安全保衛部長に軍に対する監視業務を担当していた金元弘(キム・ウォンホン)氏を任命するなど、側近を権力の中心に配置している」と指摘した。(朝鮮日報)>
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