10167 ロンドン五輪初の金メダル・女子柔道の松本薫選手  古沢襄

試合前に気合いを入れると”オオカミ”のような形相になる女子柔道の松本薫選手は私のお気に入り。前へ!前へと退かない。相手をみる眼は射るように鋭い。時には鬼気迫る形相になる。闘争心の塊が彼女の眼に現れている。
いつもなら寝てしまうロンドン五輪だったが、女子57キロ級の試合だけは見逃さなかった。野田首相も観ていたようだ。早速「おめでとうございます。ここ一番での気合と集中力。鍛え抜かれた心・技・体の充実ぶりは素晴らしかった。心から敬意を表します」とのメッセージを発表した。
これが二十四歳の女性だから凄い。日本人は闘争心を忘れた平和主義者ばかりだ。国家が衰退する時には、このようなエセ平和主義者が横行する。その意味でも松本薫選手の存在は貴重である。
<ロンドン五輪第4日(30日)肉食系女子、金を獲った! 女子57キロ級の松本薫(24)=フォーリーフジャパン=が決勝でコリーナ・カプリイオリウ(26)=ルーマニア=に反則勝ち、今大会の日本選手団第1号となる金メダルを獲得した。柔道女子でも初のメダル。女子が五輪の正式種目となってから6大会目で、この階級(旧56キロ級を含む)では日本勢初の五輪制覇の快挙。日本女子にとって「世界から最も遠い」といわれた階級に大輪の花を咲かせた。
負のスパイラルに、歯止めをかけた。「本家」の意地と誇りが、松本の気持ちを突き上げる。女子48キロ級の福見友子(27)=了徳寺学園職、同52キロ級の中村美里(23)=三井住友海上=と金メダルが期待された両エースはメダルに手が届かなかった。シナリオが狂った日本女子のなかで、鬼気迫る形相で頂点にのぼりつめた。
勝利の瞬間、厳しかった表情が緩み、涙があふれた。「仲間と一緒に練習してきたことなんかを思いだして自然と涙が出た。福見さん、中村さんの分も獲れてうれしい。(今大会の日本の金メダル第1号で)一番というのはうれしい」。
口をモゴモゴ。何かをつぶやきながら畳に向かうのは集中していると自然に出るしぐさ。畳に上がれば相手を射抜くような強い視線で攻めに徹する。準々決勝で北京五輪女王のクインタバレに快勝し、準決勝はパビアに苦戦ながらも延長で有効を取ると初めてガッツポーズ。
とくに準々決勝の難敵には得意の寝技などで積極的に攻めると、クインタバレは消耗。残り約30秒に場外際の足技で、技ありを奪って勝負を決めた。準決勝は寝技を嫌って場外際に逃げる格下に手を焼いたが、攻め続けて大外刈りでしっかり有効を取った。
メダル量産が期待される女子柔道だが、この階級は56キロ級時代を含め、世界の壁が厚く苦戦続き。「世界に最も遠い階級」とさえいわれ、2000年シドニー五輪の日下部基栄の銅メダルがこれまでの最高位だった。
「でも、(自分は)運だけはいい。ちゃんとやることをやって運を生かしたい。この階級だからというわけではなく、金メダルしか考えていない」。初優勝を飾った2010年東京世界選手権は、23歳の誕生日だった。しかも日本勢としてこの階級は初制覇。さらに、同選手権日本勢100個目のメモリアルというおまけ付き。自ら祝砲に酔った。
鋭い眼光と野性味あふれる攻撃スタイルは“肉食系女子”そのもの。「試合になると集中のスイッチをオンにして、戦闘モードに入る」と不敵に笑う。子どものころから直感で動き、対戦相手の試合の映像を全く見ない。「体で覚えた感覚を大事にしたい。映像に頼りすぎると、それだけの柔道になってしまうから」。どう猛に挑みかかる積極果敢な姿は、野生児を思わせる。
帝京大時代の恩師、稲田明氏(66)は五輪女子柔道2連覇の谷亮子が柔道を始めた当時の師範で、帝京大卒業まで二人三脚で歩んだ名伯楽。谷の目を「相手が自然と吸い込まれ、ヘビににらまれたカエル状態にした」と表現したが、「種類が違うが、輝きは同じ。亮子に匹敵する子は松本以外に見たことがない」とうなる。
規格外の破壊力が、負の歴史を打ち崩した。(サンスポ)
松本薫の話 五輪は代表が1人。君が代の聞こえ方が全然違った。ずっと五輪のためにやってきたので気持ちは全然違う。最初に泣いてしまったので、(涙は)無くなりました。ここまで長かった。いろんな苦労は思い出したが、邪念になるので目の前の試合に集中していた。(今は)パフェが食べたい。
杜父魚文庫

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