ロンドンオリンピックが始まって、ニュースはほぼオリンピックが独占している。少々、辟易している。そして、こういう時を狙ってか、政府つまり野田内閣は「何とか戦略会議」を開いて二百兆円を投入して重点的に何々をすると発表している。
また、尖閣の地権者に二十億円で売ってくれと動き回っている。ともに、狙い通りか、オリンピック報道の中で目立たない。
仮に今、オリンピックがなければ、政府がしているこれら二つの行為は、化けの皮がはがれ絶好の批判の対象となる。
「何とか連絡会議」は、明日にも着手する具体策を提示しているのではないからである。しかし、野田内閣が二年後の消費税増税を言う以上、今こそ直ちに具体的なデフレからの脱却策を打ち出し実行すべきなのだ。
また、政府の尖閣購入への動きは、都と地権者の売買交渉の妨害にほかならないからである。これではまるで、野田内閣は中共政府の代理人ではないか。
野田内閣は、増税だけが政治の目的であるかのように、よく言えば思い詰めたように、悪く言えば馬鹿の一つ覚えのように、消費税率のアップを実現する為に、厳しい周辺状況に見向きもせずに、まるで泣く子と地頭には勝たれぬという言葉通りに一年間きた。
つまり、我が日本は、何と、「増税に命をかける」という総理大臣を持っている。諸兄姉、我々は、日米安保改定に命をかけた総理大臣は知っているが、未だかつて、増税に命をかけるという総理大臣は始めてではなかろうか。それほど、この五十年で政治は矮小化しているのだ。
そもそも税が国家目的なのではないのである。国家目的実現のために税があるのだ。従って増税は、国家目的を提示し、その実現の為にさらに資金が必要だという順序で国民に提示すべきものである。
そこで、現在の我が国の状況の中で、国政の目的は何か。それは、「デフレからの脱却」と「国防」と「東日本大震災からの復興」であろう。
何故なら、この三つが果たせない国家に、福祉の充実はおろか国家の存続もないからである。デフレで失業者が街に溢れてきて福祉の充実などあろうはずはなく、尖閣と沖縄を中共に奪われれば福祉の前提である国家はなく、北朝鮮に拉致された国民を放置する福祉国家などありえず、東日本の被災者を見捨てた福祉などあり得ないからである。
これに対して野田内閣は、「税と福祉の一体改革」を唱えているので、増税を必要とする国家的目標として福祉を掲げていると弁解するだろうが、それは口先だけで、野田内閣は、デフレ脱却の方策を示さず、尖閣防衛対策に乗り出さず、北朝鮮に拉致された国民の救出策を示さず、東日本のゴミの処理は各自治体のばらばらな受け入れ表明に任せたまま何ら国としてそれに乗り出さず、ゴミの山は被災地に未だ積み上げられ放置されている。
これでどうして、国家目標を提示していると言えるのか。景気の下降局面で増税をすれば、国民経済を殺してしまう。
増税という財政面でブレーキをかけたまま、金融というアクセルをふかしても、実体景気という車体は前に進まない恐れがある。
この二つの教訓は、英国の付加価値税(消費税)増税の失敗の教訓だ。産経新聞論説委員の田村秀男氏が七月二十九日の産経新聞朝刊で論証している。
よって、野田内閣は、二年後の消費税増税を言う以上、二年後にデフレから脱却している方策を具体的に現在既に断行していなければならないのだ。
にもかかわらず野田内閣は、消費増税に景気条項を義務付けることすら回避している。つまり、野田総理は、二年後に深刻なデフレであっても消費税を上げるとしているのだ。これ英国の教訓を無視して、日本経済を窒息させようとしているのだ。
彼は既に、自分の命はかけずに、国民の命を犠牲にしようとしている。つまり「しろあり」である。七月三十一日に、政府の地権者に対する代金二十億円による尖閣購入申し込みが報道された。地権者は、一貫して売るのなら都に売ると言って政府の申し込みを断っているという。
では、この政府の購入申し込みは何だ。つまり、地権者と都の売買を妨害しているのだ。都が島を購入すれば、国民は自由に尖閣に行けるようになる。
駐中大使と野田総理は、共同してこの事態を起こさないように、都が購入することを妨害している。そして、上手く国が購入できれば、今まで通り、尖閣に自国民が行けないように、さらに固定化しようとしている。
この、野田内閣の動き、中共が喜んでいるではないか。土匪のように我が国固有の領土を奪いにきている中共の意向を承って、自国民を自国の領土に近づけないようにする政府が日本以外の何処にあるのか。
杜父魚文庫
10177 増税の前に脱デフレだ 西村眞悟

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