自民党が社会保障と税の一体改革に関する民主、自民、公明による3党合意を破棄してでも、衆院解散を求める強行路線に転じた背景には、小泉元首相と小泉ジュニアがいたことは、大方が認めるところである。政策よりも政局が好きなコイズミさんという解説まで出たが、それは表面的な見方であろう。
自民党筋によれば、むしろ政策的な争いが背景にあるという。小泉元首相からみれば、小泉路線はまだ完結していない。それどころか、民主党政権になって後退している。
このままだと2015年からは、団塊の世代が年金受給年齢に入り、社会保障費が増大する。それを消費増税で補い、社会保障費を手厚く遇する民主党の政策では、いずれは国債の暴落とそれに伴う金利上昇により、株価が下がり、日本経済のファンダメンタルズ全体に対する信頼の揺らぎから、通貨が売られ円安となり、債券安・株安・円安のいわゆるトリプル安となり日本は破綻するという危機感を抱いている。
小泉元首相は、2012年から2013年までが、こうした状況を見直し、市場経済主義に徹して日本経済を立て直す最後のチャンスとみている。この命題の前には、社会保障と税の一体改革案は筋違いの迂遠な政策だから、三党合意を破棄することにためらいがない。
一日も早く総選挙を実施して、前回選挙で落選した小泉グループの復権を果たして、経済政策のダイナミックな転換を図ることを最優先課題だとしている。
小泉路線を主導した慶応大学教授・竹中平蔵氏は次のような民主党政権批判を行っている。
民主党政権になって、経済の本質を踏み外した政策がしばしば見られるようになった。原則を踏まえれば、本来あり得ないような政策が十分な議論もないまま決定されていく。
中小企業などにほぼ無制限に返済猶予を認める「モラトリアム法」は、不良債権を塩漬けし資産の配分を歪めて金融機能を低下させている。雇用調整給付金は労働の効率的な移動を妨げ、中期的な経済活力を削(そ)いでいる。
結果的に日本経済のパフォーマンスはここ数年、世界の異常値といえるほどに悪化した。株価は最近、少し上昇しているとはいえ、過去5年間で42%の下落。5年前の水準を回復した米国やドイツなどに大きく見劣りする。就業者は4年間で140万人減少した。
杜父魚文庫
10210 小泉氏 社会保障と税の一体改革案を批判 古沢襄

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