10267 安倍元首相の「再チャレンジ」  古沢襄

米ウォール・ストリート・ジャーナルは「安倍元首相の”再チャレンジ”」と題する論評を掲げた。国政進出を目指す地域政党「大阪維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)との接触が取りざたされる安倍氏だが、保守を基軸とする政界再編を目指しているとしている。
米紙が安倍氏や橋下氏、石原都知事の動向に注目するのは、その根底に新しいナショナリズムの台頭が日本に訪れるという警戒感があるようだ。
それは歴代の民主党政権が招いた外交・安全保障政策の失政がもたらした反動なのだが、国内ではタカ派の指導者を求める声が一部で高まっているためと分析している。
さらに安倍氏の維新の会との合流は、真夏の夜の夢ではなさそうだとし、「安倍元首相リターンズ?」の表現で安倍氏の動向に焦点を当てた。
<解散・総選挙を視野に入れた動きが活発化してきた。特に国政進出を目指す地域政党「大阪維新の会」(代表・橋下徹大阪市長)との接触が取りざたされる安倍晋三元首相の動きに注目が集まる。
2006年9月、首相に選出された安倍氏朝日新聞電子版は、大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長が今国会中の衆院解散も念頭に、国政進出に向けて新党を立ち上げる意向を固めた、と伝えた。保守を基軸とする政界再編を目指しており、自民党の安倍氏らに中核議員として参加を要請しているという。
時事通信によると、自民党町村派の町村信孝会長が2日夜、同派に所属する安倍氏と会談し、総裁選に立候補する意向を伝え、支援を求めた。これに対し、安倍氏は「私にはやり残したことがある。応援してくれる人もたくさんいるので、対応はこれから考えたい」と述べたとされ、動向はなお注目される。
実際、自民党内には安倍氏を谷垣禎一総裁の後任に担ぎ出そうとする動きがある。野田政権による弱腰外交が韓国の李明博大統領の竹島上陸を招いたなどの批判から、国内ではタカ派の指導者を求める声が一部で高まっているためだ。
しかし、安倍氏には体調不良を理由に1年で政権を放り出したイメージがなお残っており、党総裁への返り咲きには抵抗も強い。
実弟である自民党の岸信夫参院議員は次期衆院選で空白区となっていた山口2区から出馬する方向。岸氏の参院から衆院へのくら替えは、総裁ポストをターゲットにしたもので、安倍氏不要論とも受け取れる。首相就任の条件としては衆参どちらの国会議員でも構わないが、自民党ではこれまで衆院議員が総裁になっている。
安倍氏の維新の会合流は、真夏の夜の夢ではなさそうだ。JRT日本版では2日の「安倍元首相リターンズ?」でこのことを示唆していた。
安倍氏は小泉純一郎元首相の下で自民党幹事長や官房長官として政権を支え、小泉氏の党総裁任期切れを受けて2006年9月に党総裁選に立候補した。この時は「再チャレンジできる社会を作る」というのが目標だった。2007年9月に政権を放棄してから5年、今回は政界再編に乗じた安倍氏の再チャレンジである。
ただし、有権者が橋下市長に期待するのは、内政も外交も行き詰まった日本の改革だ。小泉氏が進めた構造改革を逆行させた安倍氏の合流となれば、無党派層の票は行き場を失う可能性もある。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
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