10288 竹島周辺の日韓軍事衝突はあり得ない  古沢襄

日本と韓国が竹島の領有権で、不測の軍事衝突になるとは、日本人は考えないが、韓国人の間では「独島:韓日もし戦わば」といった好戦的な記事が時折、掲載される。
七年前の二〇〇五年に韓国海洋戦略研究所が主催するセミナーで、韓国の「大洋海軍の父」と呼ばれる安炳泰(アン・ビョンテ)元海軍参謀総長が講演した。日韓の軍事力比較を客観的に分析したもので、最悪の場合には軍事衝突があると想定していたが、韓国海軍が日本の海上自衛隊の軍事力に及ばないことを述べていた。
独島(竹島)をめぐる韓日間の紛争が起こった場合、軍が衝突する前に交戦するのは韓国の海上警察と日本の海上保安庁だとみている。韓国側には3000トン以上の大型警備艇が多い。3000トンから6500トン級の警備艇は韓国側が15隻、日本が13隻だ。しかし、900から1000トン級の警備艇は韓国側が7隻に対し、日本は38隻。
衝突が韓国の海上警察と日本の海上保安庁の間で小競り合いをしている中に、両国の外交当局が話し合いで紛争を納めるというのが考えられるシナリオ。3000トン以上の大型警備艇を保有する韓国は、日本と互角に渡り合える。
二〇〇五年以降、韓国は海上軍事力の強化を急速に進めている。初の韓国製イージス艦「世宗大王艦」が進水し、アジアでは最大の揚陸艦である独島艦、5000トン級の韓国型駆逐艦KDX‐Ⅱ、1800トン級214潜水艦も保有するようになった。
しかし日本の海上自衛隊の戦力もさらに強化されている。これまでのイージス艦よりも戦力アップした最新鋭イージス艦2隻を加え、イージス艦だけで6隻を保有している。
戦後初のヘリ用空母と呼ばれる1万3500トン級の日向や水中作戦能力が大幅に向上した最新鋭の3000トン級潜水艦も配備された。
その結果、艦艇の総トン数は韓国が13万700トン、日本は42万8000トン。排水量1000トン級以上の戦闘艦は、韓国海軍が40隻だが、日本は3000トン級以上だけでも40隻以上を保有している。両国海軍が敵艦を攻撃する際に使用される対艦ミサイルは、そのほとんどが米国製のハープーンだが日本の保有数の方がはるかに多い。
つまり「独島:韓日もし戦わば」は新聞やテレビでの物語にはなるが、実戦にはなりえないことを、韓国の軍事上層部は熟知している。北に北朝鮮との軍事緊張に備え、南に日本との軍事衝突を予想する”二正面作戦”などは取り得ないわけである。
                      
杜父魚文庫

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