米国にとって日本が自立し、独自のナショナリズムの高揚を図ることは、好まないらしい。中国や韓国に小突かれながら、じっと耐える”決められない国家”であることがお望みのようだ。
米ウォール・ストリート・ジャーナルは「日本でナショナリストの影響力が拡大」という記事を東京発で送った。ナショナリストが騒いでいるのは、むしろ中国や韓国の方ではないか。
日本のナショナリズムはまだ眠っている。
<【東京】中韓との緊張の高まりを受けて、日本でナショナリストの影響力が強まっており、野田佳彦首相にとって頭痛の種になっている。
松原仁国家公安委員長と羽田雄一郎国土交通相は終戦記念日の15日、東京・九段北の靖国神社を参拝する意向である。民主党政権下で、閣僚が終戦記念日に靖国を参拝するのは初めてとなる。
一方、韓国の李明博大統領は先週日韓が領有権を争っている竹島(韓国名・独島)を訪れ、日本は激しく反発した。韓国政府高官によれば、李大統領は15日、日本の植民地支配からの解放式典での演説で、日韓両国の関係改善のためには日本は歴史問題を解決する必要があると訴える見通しである。
また中国政府は、この3カ月だけでも中国から海外に逃れた亡命ウイグル人による「世界ウイグル会議」が5月に東京で開催されたことと野田首相が尖閣諸島(中国名・釣魚島)の国有化方針を打ち出したことに対し正式に抗議している。
こうした中で日本の保守派政治家は最近、伝統的な街頭での抗議行動から脱し、ソーシャルメディアなどを使って若い世代の支持をつかもうとし始めている。各種のブログやツイート、インターネット動画などでは、日本の主流メディアでは取り上げられないナショナリスト的な意見が掲載され、保守派政治家と国民との距離を近づけている。
ナショナリストの主張が影響力を増していることは、野田首相の苦悩を深めている。野田氏は近隣諸国との対立激化を避けようとしている。だが、民主党の代表選挙を控え支持率低迷に見舞われている。日本政府は、ナショナリストからの圧力を受けて領土問題で強硬な姿勢を強めざるを得なくなっており、李大統領の竹島訪問に対し、駐韓大使を日本に一時帰国させ、14日には来週に予定されていた日韓財務相会合を延期すると発表した。
ナショナリストは、領土問題への関心の高まりが自分たちの最終目標、つまり自衛隊の役割を厳しく規制している平和憲法改正の実現に向け勢いをつけると期待している。
自民党の古屋圭司衆院議員は、「日本は平和ボケしていると思っている人が少しずつ増えてきている。尖閣諸島の問題にしても、竹島の問題にしても、北方領土の問題にしても、今まで自分達の領土で、ここまでバカにされたことはなかった」と話す。同氏は、ウイグル会議に関わったり、中韓に対する日本の領土的な主張への理解を得るため米ニュージャージー州を訪れる議員団に参加するなどナショナリスト的な活動に力を入れている。
21世紀の日本のナショナリスト運動には単一の指導者や政党はなく、民主、自民両党政治家らの緩い共闘で成り立っており、右翼の活動家や、著名な評論家や経済界指導者がこれを支援している。
ナショナリストの代表は石原慎太郎東京都知事で、4月に都による尖閣諸島買い取り計画を発表したことをきっかけに、影響力を強めているようだ。石原氏が尖閣諸島買い取り資金に充てるため集めている寄付金は、募集開始後2カ月間で12億円を突破した。
石原氏が、この問題で主導権を取ることで外交的な危機が生じることを懸念した野田政権は、現在民間人が所有している同諸島を国が買い取らざるを得ないと思ったようだ。しかし、これが中国を怒らせ、さらに日本国内での反発を招いた。また、香港からも運動家を多数乗せた船が数日中に同諸島に到着する見込みだ。
代表的なナショナリストの組織は従来、やかましく威嚇的なイメージの伝統的な右翼集団とは距離を置いてきた。また最近の運動の目標も、過去の大戦や天皇崇拝などを中心にしてきた従来の右翼とは異なる。最近のナショナリスト運動には、反原発運動と同様に社会に不満を持つ若年層が参加しているという見方もある。もっとも反原発運動の方が最近は社会に受け入れられてきている。
最近はナショナリスト的ウェブサイトが存在感を増しており、いわゆる「ネット右翼」の主張が目につくようになった。こうした意見は、中国や韓国に対し挑発的で侮蔑的な表現を使うことが多い。
映画監督兼脚本家の水島総氏も、ナショナリストの代表格だ。同氏は、領有権を主張して尖閣諸島に7回、漁船を送った。また討論番組主体の有線テレビ局を運営し、番組はインターネットでも視聴できる。同氏は、「本当のこと、真実を伝えない放送局と大新聞に対抗するために始めた」と語った。(ウォール・ストリート・ジャーナル)>
杜父魚文庫
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