10322 中国は経済ミサイルでフィリピンを脅した 古森義久

中国は領有権紛争で軍事や政治、外交だけでなく、経済的な手段をも動員して 相手国を威圧します。経済的なミサイルです。
南シナ海の環礁の領有権で対立したフィリピンに対しては中国はバナナの輸入を減らすという作戦をとりました。
<<中国の「経済ミサイル」に要注意 尖閣を巡る次の圧力は「威圧経済外交」か>>
そして同論文は述べていた。「中国はカンボジアのこの対中経済依存を利用して、ASEAN外相会議では共同声明に南シナ海に触れる記述を一切含めないようにすることを強く要請し、カンボジアはそれを実行した。その結果、同会議は発足以来45年間、初の共同声明なしとなった」
カンボジアと言えば、かつてあの自国民大虐殺のポル・ポト政権時代には中国からの支援を特に大規模に受けていた。だがその後、同政権が倒れ、ベトナム寄りの新政権となったため、中国とのきずなはそれほどは太くないように見られていた。しかし10年間で100億ドルという巨額の経済援助は、カンボジアを少なくとも外交面で中国のコントロール下に置いてしまったということである。
中国はつまり領有権紛争に関して、経済手段を使って自国の立場を守り、紛争相手の諸国への痛撃を加えたというわけだった。
<フィリピン、日本、ノルウェーへの経済圧力>
グレーサー論文は中国の威圧経済外交の第2の実例としてフィリピンへの圧力を挙げていた。
フィリピンは2012年4月、南シナ海の中沙諸島スカボロー礁の領有権を巡り中国と激しく対立した。フィリピン、中国ともに同礁海域に艦艇を送りこんだ。両国間の対決が米国をも巻き込む国際的な折衝を背景に展開された。やがて6月にはフィリピン政府はスカボロー礁近くから自国の艦艇をすべて引き揚げた。だが対照的に、中国は数隻を残し、領有権紛争は中国が有利のままに一段落を迎えたのだった。
同論文によると、こうした中国有利の展開の背景には、中国政府がフィリピンからのバナナの輸入の検疫措置を異常に厳しくするという措置が取られていた。中国は「ペストに汚染されている疑いが強い」と主張した。その結果、フィリピンバナナの中国輸出が大幅に減ってしまった。フィリピンはこれまで外貨稼ぎ主要産品のバナナの全輸出のうち30%をも中国一国に出してきたから、その大幅減少は国内経済にも痛打となった。
中国政府はフィリピン産のマンゴ、パパイヤ、ココナツ、パイナップルなど他の果物の輸入手続きをも意図的に遅らせるようになったという。中国当局はそのうえに中国人観光客のフィリピン訪問を禁止してしまった。その結果、フィリピン経済全体が大きな打撃を受け、フィリピン経済界は自国政府に領有権問題での中国への譲歩を訴える経緯があったのだという.(つづく)
杜父魚文庫

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