10329 中国はノルウェーにまで経済報復 古森義久

中国政府が領有権拡張の手段として他国への経済懲罰を実行するというレポートです。中国の威圧経済外交、つまり経済ミサイルというわけです。
中国の経済ミサイルはなんとノーベル平和賞の舞台を供するノルウェーの政府にま及んだというのです。
<<中国の「経済ミサイル」に要注意 尖閣を巡る次の圧力は「威圧経済外交」か>>
グレーサー氏の論文は同様の事例の第3として2010年9月の中国政府の対日レアアース(希土類)輸出停止をも指摘した。
日本側でも当時、広く報道されたように、中国政府は日本へのレアアース輸出の停止を即時、発表した。日本側が領海侵犯の中国漁船の船長を拘束したことへの報復であることが明白だった。中国当局は自国の船舶に日本にレアアースを運ぶことを禁じたのだった。その一方、他の諸国へのレアアース輸出はそのまま放置した。明らかに標的は日本だったのだ。
同論文は中国側のこの措置が「日本側を警戒させ、日本政府に中国漁船の船長の釈放を決定させる際の主要な要因となった」と述べている。レアアース禁輸が日本政府の政策を変えさせる効果を発揮したというのである。
さらに同論文は「レアアース禁輸は中国が国際紛争の自国に有利な解決を求める際に経済的手段を使うことをためらわない証拠だ」とも強調していた。中国は尖閣問題でもこうした威圧経済外交をすでに実行したというのである。
グレーサー論文は「中国の威圧経済外交の標的はアジア諸国に限らない」と述べて、第4の実例としてノルウェーを挙げていた。中国政府がノーベル平和賞を巡ってノルウェーに露骨な経済圧力を威圧的にかけたというのだった。
2010年10月、ノルウェーのノーベル賞委員会はノーベル平和賞を中国の民主活動家の劉暁波氏に与えることを発表した。中国政府はこれに対しノーベル賞委員会がノルウェー政府とは別個であるにもかかわらず、ノルウェー政府に同平和賞を劉氏に与えないことを求め続けた。
同論文によると、その要求が容れられないとみた中国はノルウェー産サケの自国への輸入を新規制の発動で大幅に削減した。その結果、2011年のノ ルウェーの対中サケ輸出は前年分の60%も減ってしまった。しかも中国政府はノルウェー政府からの輸入手続きについての協議の要請をも拒み続けたというのである。明らかな報復であり、威圧だった。
<中国との経済取引はいつも慎重に>
グレーサー論文が挙げた以上の4事例のうち3例はいずれも領有権紛争での経済手段の利用だった。中国政府は、政治や安保面、特に領有権問題で他国の政策や態度を自国の主張を利する方向へ変えさせるために経済手段を威嚇的に使うことを恒常的に実行しているのである。つまり「威圧経済外交」なのだ。
中国は貿易でも援助でも投資でも、経済面でのグローバルな活動を急速に広めている。その種の活動を本来、経済とはまったく無関係の領有権や政治的な紛争での相手国攻撃の手段として平然と使うというわけだ。となると、中国との経済取引はいつも慎重に、ということとなる。尖閣諸島の領有権を中国側から不当にされた日本は、特にその中国側の経済ミサイルに注意しなければならないのである。(終わり)
杜父魚文庫

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