10338 三峡ダム、あらたに二万人を強制移住   宮崎正弘

五年以内に「さらに十万人を」。ダム工事は完成、水没面積はシンガポールより広く、地滑り頻発流域となった。
世界一の水力発電所は、世界一の汚染水庫となり、世界一の強制移住を伴った。三峡ダムの発電量はパキスタン、もしくはスイス一国分に相当する。
水位175メートル(高さ185メートル)。ということは上流域の175メートル以下の地域は水没し、過去17年間で130万人が、安全な場所に移動した。
水質の汚染は以前から言われた。環境問題の議論は生態系が激変し、生息する魚の半分の種類が死滅するという懼れだった。
しかし地質学者、地震学者らがもっとも心配したのは、水没個所が引き起こす地震、土砂崩れ、地滑りという災禍。統計がないが、2007年以後の報道記録をよせあつめると48名が流域の地滑りで犠牲となっている。
黄土波という土地には、以前に強制移住された住民が集中してすむ高層アパートが建ち並ぶ。この移住者集落が地滑りの懸念がもっとも大きいとされ、新しい強制移住の対象となった。
何のことはない。またまた立ち退きを強いられるのである。「二次移住」組の不満は高まっているが、もはや移住そのものに反対する人はいない。問題は補償金額と条件である。
杜父魚文庫

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