常万全か、あるいは総主流派体制なら劉源、張海陽が再浮上の可能性も・・・。五年前の第十七回党大会で胡錦涛は、総参謀総長だった梁光烈をはずし、国防部長に異動させた。
中国における「国防部長」とは行政上の虚席でしかないことは、国家軍事委員会が党軍事委員会と比べると存在理由の希薄な状態と同じである。「中国」なる国家は、一皮めくれば行政は飾りであり、党が全てである。市長より市党委員会書記が数段上であるように。
現在の総参謀長は陳丙徳である。参謀部は表向きの本部は北京市西城区愛民街にある。軍が移動するとき、配置に就くとき、すべての軍の司令がここに集約される。そして軍の参謀部の中枢は西山にあり、この地域は厳重な警戒態勢が敷かれている。
ちかくに玉泉山基地があり、西郊飛行場は軍専用である。「西山」と総称すれば、軍中枢という意味で使われる。地下司令部が存在する。
12年四月に江沢民が「西山」に陣取って政治局常務委員会の緊急会議を開催させたのも、この西山。そして同会議で薄煕来の失脚を決めたのだった。
さて次期参謀総長だが、房峰輝(北京軍管区司令員)と、章泌生(副参謀長)の名前が取りざたされてきたが、ダークホウスとして、張又侠(瀋陽軍管区慰司令員)の名前も挙がってきた。
房峰輝は胡錦涛派。次期軍事委員会入りは確実。また章泌生(副参謀長)は、二月に「中国人民解放軍は党ではなく国家に従属する『国軍化』が望ましい」として発言で、停職処分を受けたとする報道がなされたが、彼もまた胡錦涛派である。復活の可能性が極めて高い。
ダークホウスの張又侠は「太子党」であり、父親の関係から第十四軍との関係が深く、江沢民派と見られる。
江沢民派の徐才厚(現在、軍事委員会副主任)の覚えめでたく、江沢民派優位ならば、張が総参謀総長に就く可能性がある。順当に行けば江沢民派の常万全が有力である。
このほか、軍事委員会入りしそうな太子党の面々と言えば、劉少奇の息子の劉源のほか、海軍政治委員の劉暁江、国防大学政治委の劉亜州、そして戦略ミサイル軍政治委員の張海陽が比較優位のポジションにいるとされるが、北戴河会議で、どう決まったか。人事が公表されるのは第十八回党大会最終日になる。
杜父魚文庫
10366 軍権は誰の手に落ちるか? 宮崎正弘

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