10402 イスラム圏の次は中国? 防衛体制の強化が急務 加瀬英明

いま、2つの世界が大きな音をたてて、壊れつつある。
1つ目が、ヨーロッパだ。ユーロ圏が解体しつつある。もう1つが、北アフリカからペルシア湾岸までひろがる、イスラム圏である。
ギリシアがユーロ圏に辛うじて踏み止まったが、ギリシアをうまく救えるだろうか。ギリシアのGDP(国内総生産)はユーロ圏の2%にしかすぎないが、1997年のアジア経済危機は、タイから始まってアジアに拡散し、先進諸国に及んだ。
昨年1月にチュニジアの「ジャスミン革命」によって、ベン・アリ独裁政権が倒れ、アラブ・イスラム圏に広がった。
マスコミは「アラブの春」といって喝采したが、民主革命と囃し立てるのは誤っており、革命前よりも状況が悪くなるはずだ。
今日まで、アラブ世界で民主主義が行われたためしがない。独裁政権はみなイスラム原理主義を敵視して、弾圧した。
砂漠の民は、つねに専制をとってきた。イスラムはモハメッドの死後180年以内に、ヨーロッパのイベリア半島からインドに至る大帝国を築いた。征服者は征服地を力づくで、抑えてきた。
独裁政権が将棋倒しになって、イスラム原理主義政党が合法化された。チュニジアやエジプトで行われた選挙で勝ち、エジプトではムスリム同胞団の大統領が登場した。
イスラム原理主義は、イスラム教が7世紀に生まれた時の厳しい戒律による政治を行うもので、現在のイランと、タリバン政権下のアフガニスタンがそうだった。
イスラム社会は今日でも対立する部族と宗派が、社会の基本単位となっている。中東の地図を見れば、国境線が直線に引かれている。ヨーロッパ列強が中東を分割した線だから、国家意識が育たない。
日本のマスコミは、「シリアで市民への迫害・虐殺が止まらない」と説いているが、多くの部族や、宗派が入り乱れた殺し合いであって、もともと市民などいない。
リビアでカダフィ政権は、140以上の部族に分かれて、抗争していた国を1つにまとめていた。いまリビアでは、毎日、銃声や爆裂音が絶えない。
かつてイスラム文明はキリスト教圏より、はるか前を進んでいたが、16世紀に入ると、ルネッサンスによって生れ変ったキリスト教圏によって、追い抜かれた。そして、第一次大戦後にヨーロッパの支配下に入ると、深い劣等感に責なむようになった。
ところが、1970年代の石油ショックによって原油価格が暴騰すると、西側諸国がアブラ欲しさのために、イスラム産油諸国を拝跪したのが転機となった。
イスラム圏は、突然、自信を回復した。西洋を模倣することをやめて、イスラム教が力を回復した。日本をはじめとする石油消費国が、イスラム原理主義を呼び出したのだった。
もしかすると、5年以内に3つ目の世界である中国が崩壊する可能性がある。その前に、中国という恐しい龍が暴れるのではないか。
中国は鄧小平のがむしゃらな経済成長と、一党独裁を両立させるという国家発展のモデルが行き詰まっている。国内の安定を保つために、いっそう軍に依存するようになっている。北朝鮮もどきの中国版の「先軍政治」だ。
日本は防衛体制を強化しなければならない。
杜父魚文庫

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