さて、今朝の毎日新聞に目を通し、少し驚きました。元政治部長の山田孝男氏が自身の2面コラム風知草「慰安婦論争史を読む」の中で、私も先日引用した現代史家の秦郁彦氏の著書「慰安婦と戦場の性」(新潮選書)の内容を紹介した上で次のように書いていたからです。
《いま日本では、河野談話の見直しが盛んに議論されている。私自身、見直しに賛成だが、擁護論も根強いようであり、河野談話の存廃だけを争って国論の分裂を招くのは避けたい》《問題の根は日本にある。韓国の出方待ちではなく、まずは秦の労作を的確、良質な英訳で世界に発信したらどうか》
……全体の文意は留保を置いたあいまいなものですが、それでも「私自身、見直しに賛成だ」と明確に書いてあります。山田氏個人の意見であり、社論とは異なるのでしょうが、「うわぁ、あの毎日新聞でとうとうこういう意見が表明されるようになったか」と新鮮な思いがしました。
このコラムは、秦氏の著書を引きながら、慰安婦問題が先鋭化した原因が、1992年1月の朝日新聞記事にあることも記しています。もちろん、毎日には毎日の事情もあるのでしょう、朝日を明確に批判したわけではなく突っ込みは甚だ甘く、鋭く明瞭な筆致が特徴の山田氏の文章としては、どうにも食い足らないものですが、それでも、いい傾向だと思います。これも「李明博効果」でしょうか。
本日、たまたま話した外務省元高官も李大統領が天皇陛下に謝罪を要求した件を強く批判し、「これまで日本は韓国には配慮し、遠慮しながら接してきたが、今回、韓国の側から一線を越えた。韓国の保守というものが、どの程度のものかもよく分かった。今は両国が普通の国と国との関係になるいい機会だ」と述べていました。
政界でも官界でもメディア界でも、日本のあちこちで、もういちいち韓国のような駄々っ子の相手をするのはやめよう、突き放してしまおうというコンセンサスが育ってきました。いいことです。遅きに失した感は否めませんが、それでも改めるべきは改めるべきですからね。
ちなみに、秦氏の「慰安婦と戦場の性」の中でインドネシアについて取り上げた部分(214ページ、インドネシア兵補協会が元慰安婦を名乗る女性に行ったアンケートに関する論評)には、以下のような記述があります。
《兵補協会のラハルジョ会長は、このアンケート作業は高木健一弁護士の指示で始め、彼が作った文案で実施したと産経新聞記者へ述べているが、当の高木は「助言はしているが、僕らが仕掛けたわけではない」と弁明している》
名前は記されていませんが、ここで出てくる産経記者とは私のことです。だからというわけではありませんが、この本は慰安婦問題のすべてが網羅的・実証的に書かれていてお薦めです。全く、ここまで実態が解明されているにもかかわらず、いまだに強制連行説を振りかざす人たちって……。
杜父魚文庫
10430 毎日新聞コラムが河野談話「見直しに賛成」 阿比留瑠比

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