李源潮組織部長の後釜に郭声昆(広西チワン自治区党書記)が急浮上。最後の土壇場に来て、まだまだ闇の奥の暗闘が続いている。権力闘争とは、日本の民主党代表選や自民党総裁選のような、なまっちょろい戦争ではない。血で血を洗う政争である。
胡錦涛が秘書の令計画を降格させる嵌めに陥ったのは、どうやら薄煕来失脚に対する上海派の報復と見られることが判明した。薄失脚の直接原因は夫人の英国人殺しだった。家族の犯罪が表面化すると、連座するというわけだ。令は中央弁公室主任から、統一戦線部長に左遷された。
ことし3月、北京四環道路でフェラーリが事故を起こした。丹羽大使のクルマから日章旗が奪われた道路である。フェラーリを運転していた男性が死亡、乗っていた女性二人も重傷を負った。事故現場の写真はネットからすぐに消されたので、誰?と憶測を呼んでいた。
この交通事故を起こし、死んだのが令計画の息子だった。9月3日付けの『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』がすっぱ抜いた。
これにより胡錦涛は右腕を奪われたかたちになり、令計画は上海派の報復の餌食とされたわけだが、政治局員に昇格の展望も同時に失われた。「博訊新聞網」(9月4日)は、「閑職の政治協商会議副主席に最終的には落ち着くだろう」と予測している。
玉突き人事は意外な人間を中央へ呼び寄せる。次期政治局常務委員入りが確実と言われる李源潮は現在政治局員兼組織部長。つまり党全体の人事権を持つ。李は太子党にして団派。
広西チワン自治区の党書記は、郭声昆。1954年江西省生まれ。74年共産党加入、北京科学技術大学で経済管理楽人卒業、第十六、十七党大会で中央委員候補。国有企業数社の監事、総経理を歴任し、2004年に広西チワン自治区で政界へ転出。同自治区人民政府副主席(副省長に匹敵)、08年から広西チワン自治区党書記。並びに全人代常務委員会主任を華ね「広西王」と言われた。
郭声昆は下放された「知青」の経験もあるが、団派でも上海派でもなく、高層部からの庇護がないので、これまでノーマークだった。
むしろ無派閥ゆえに組織部長に最適という評価が先行し、『明鏡月刊』は、次期組織部長に抜擢されると、『最大の黒馬(ダークホース)』と伝えている。(註 郭声昆の「昆」は王扁)
杜父魚文庫
10431 中国政界に最大のダークホース登場 宮崎正弘

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