10432 朝鮮の同じ手口に引っかかるな 西村眞悟

日朝間の課長クラスが北京で、北朝鮮に眠る戦没日本人の遺骨に関する実務者協議をした。
連日、テレビニュースで両者が放映された。その日本外務省課長は、「まじめが歩いている」ような風情、北朝鮮の課長は、ニヤッとしてうつむき加減なところはごろつき的雰囲気をもっている。タイプが全然違う。その理由は北朝鮮実務者の顔つきに出ている。要するに、日朝の「実務者」は、担当する「実務」が全く違うのだ。
そして、この協議に合わせて、いち早く、北朝鮮に入り、荒地を掘って出てきた遺骨を集めて僧侶とともに手を合わせて供養している日本の遺族の方々の映像も放映された。
 
我々日本の関心は「遺骨」だけではなく、「生きている拉致被害者の救出」だ。これは当たり前だ。六十七年前に亡くなって北朝鮮の土に埋められた方々も、祖国日本よ、どうしたのだ、まず、生きている同胞を救えよ、と促しておられるはずだ。
ところが、遺骨供養の映像が放映されてくると、拉致被害者の救出が背後に退き、何か北朝鮮が日本人の心を理解して良いことをしてくれているような錯覚が起きかねない。この遺骨供養の映像を映させたのも北朝鮮の意図だから、北朝鮮は、日本内にこの錯覚が起こることを目論んでいると思われる。
だから次に言う。同じ手口に騙されてはならない。
この協議の本質は、北朝鮮は、遺骨で金儲けをしようとしているということなのだ。敗戦後の混乱で命からがら満州から逃れ、ソビエト軍らに北朝鮮で殺された日本人は三万四千六百人と言われている。そのうち、一万三千の遺骨は日本に帰還している。従って、現在二万千六百の遺骨が北朝鮮内に残存していることになる。
また、先日、台湾の霧社まで同行させていただいた門脇朝秀翁のご両親の墓は朝鮮内にある。従って、敗戦直後に限らず、日韓併合時代を含めて北朝鮮に埋葬された日本人の遺骨はさらに多くなる。
そこで、北朝鮮は、これらの日本人の遺骨の返還にどういう条件を付けているのか。それは、遺骨一体当たり四百万円支払え、である。
さらに、遺骨発掘のために中断された工事の補償、つまり逸失利益の支払いの要求もされている。この結果、例えば、二万人の遺骨を日本に帰還させるためには約一千億円を北朝鮮に支払うことになる。
かの国の国家予算は、二千億円くらいだと思うが、北朝鮮は、二万人の日本人の遺骨で、国家予算の半額を日本に支払わせようとしている。
異国の者ではあっても、帰国を願いながら北朝鮮で非業の死を遂げた人の遺骨である。その遺骨を遺族が日本に持ち帰るのに、実費ならともかく、一律四百万円を要求する国が何処にあろうか。
南の韓国では、大統領自身が戦前の韓国人売春婦のべらぼうな額の売春代金の支払いを我が国に要求している。なるほど、北も南もみな朝鮮だ。政治的にはともかく、根性においては見事な統一だ。
では、同じ手口に引っかかるなとは何時のことなのか。それは、丁度十年前の日朝平壌首脳会談と日朝平壌宣言のことだ。
日本国民は、この小泉総理の訪朝は、拉致被害者を救出するためだと思っている。小泉内閣自身も、拉致被害者家族にそういう説明をした。事実、五名だけは日本に帰ってきた。
しかし、十年目の今、この時に小泉総理が平壌で署名してきた平壌共同宣言を新たに読んでいただきたい。この共同宣言には、拉致被害者のことは一言も触れられていない。文書の約七十パーセントは日本が謝罪して北朝鮮に「兆単位の金」を支払い北朝鮮への請求権を放棄する「金を払う約束」なのだ。
文書の残りの三十パーセントは、北朝鮮の、日本人の安全には配慮するという約束と、核の開発はしないミサイルは飛ばさないという約束。
しかし、十年がたっているからもう一目瞭然。この共同宣言における北朝鮮の約束はみな嘘だ。北朝鮮は、未だに拉致した日本人を返さず、核実験をしてミサイルを飛ばしたではないか。
嘘をつかれてそれを信じ、日本だけが金を払う約束をして、大量の松茸をお土産にもらって帰ってきたのが、十年前の初の日朝首脳会談だった。
つまり、北朝鮮は、表現が悪いが、拉致を餌にして、日本から自国の五年分以上の国家予算に相当する金を騙し取ろうとしたのだ。
外務省あたりは、未だに、日朝交渉は、「日朝平壌共同宣言の精神に基づいて」などと言っているが、頭がどうかしているのではないか。本当に「日本の外務省」か。
 
二国間首脳の共同宣言に、これほど嘘ばかり書いた国は北朝鮮以外にない。同時に、これほど嘘を書いた文書に署名して、松茸のお土産をもらって意気揚々と総理が帰った国も日本以外にない。
その時の総理と外務省の、日本国内での日朝首脳会談の説明は、「羊頭を掲げて狗肉を売る」誤魔化しだった。
 
十年前の日朝首脳会談と現在の遺骨返還日朝協議。両者は、ともに「人道」を装っているが、ともに「同じ手口」なのだ。
この間、北朝鮮のもう一つの時間稼ぎの手口が進行していた。それは、中共との謀議のうえ、アメリカ、ロシア、韓国を巻き込んだ「六か国協議」だ。
この「六か国協議」という六人乗りの乗用車の、後部座席の真ん中に乗っていたのが日本だ。そして、運転席と助手席から後ろを向かれて代金の支払いだけを請求されていた。
そして、この間、北朝鮮はせっせと核ミサイル開発を続け、今や核とミサイルの輸出国に躍り出てきた。輸出先はイランなど中東アフリカだ。
これによって北朝鮮は、高額の金を稼げるようになるとともに、日本に核ミサイルを撃ち込む最も現実性のある国に「成長」してきたのだ。
この北朝鮮の時間稼ぎによる核開発進捗という「六か国協議」の成果は、アメリカ国務省の国務長官のライスと補佐官のヒルの無能で無責任極まる態度が招きよせたのであるが、一番の脅威にさらされる日本外交の無能無警戒ぶりにはさらに愕然とする。
さて、これほどまでに馬鹿にされて、騙され続けてきた我が国は、これからいかにすべきか。
それは、断じて、急がば廻れなのだ。原点に還り、まず、大局観に立つ。それは、この自国民を奴隷にし日本人を拉致してテロを実行しようとする北朝鮮という独裁国家は、同じく共産党独裁国家である中華人民共和国とともに、近いうちに必ず崩壊するという確固とした見通しだ。
そのうえで、北朝鮮の三代目の独裁者とファミリーと労働党幹部が必ず持っている体制崩壊への恐怖を利用して、断固として経済制裁を継続するとともに、強力な核抑止力を獲得することである。
つまり、我が国は、強くなければ温かい心をもてないし、強くなければ同胞を救出できないのだ。そして、平壌共同宣言より十年後の昨日九月二日、日比谷で再び、天啓のように発っせられた、十三歳で拉致されためぐみちゃんの母、横田早紀江さんの次の言葉を実践しなければならない。
「こんなに馬鹿にされながら、なぜ怒らないのでしょうか。もっと怒ってください。日本人の心として怒って、この国をもっと強い国と、温かい心をもった国にしてください。」
戦後から脱却して、断固として「強い、温かい心をもった、日本」を建設しよう。
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました