10455 党首選、もっと面白くならないか  岩見隆夫

最近の政治、面白いですか、面白くないですか。政界のあれこれ、わかりやすいですか、わかりにくいですか。世論調査にそんな設問はないだろうが、もしあれば回答は、面白くない、わかりにくい、が圧倒的と思われる。
政治記者稼業を長年やってきた私もそう感じる。なぜかと問われてもうまく答えられないが、しいて言えば、政治家に右顧左眄型が増え、腹を据えてモノを言う人が少なくなった。目先主義で大局的にとらえようとしない。だから、言葉に躍動感がない。ないないづくしだ。以前はバシッと核心を突いたことを言う、従ってわかりやすい政治家がいたんだが。
しかし、そんな愚痴ばかり言ってみても始まらない。政治家だけがおかしいわけでもなさそうだし。とにかく、政治のシーズン入りである。最近の政情をあらまし説明すると−−。
全国紙が衆院300小選挙区の立候補予定者と情勢を特集し始めると、衆院解散まもなく、という空気が一気に高まる。先陣を切って、『読売新聞』が八月二十七、二十八両日付で七面にわたり詳報した。
それによると、予想立候補者数は小選挙区と比例単独を合わせて1039人、大阪維新の会、減税日本など地域政党が今後大量に擁立する構えを見せているので、最終的には1300人を超えそうだという。議員削減がなく、現在の定数480人で争うことになれば、約2.7倍の激戦になる。
だが、解散まもなく、と言っても、それがいつになるのかわからない。解散権を握っている野田佳彦首相は、消費増税法の成立(八月十日)に協力してもらう見返りとして、
「成立の暁には、近いうちに国民に信を問う」と約束した。相手は自民党の谷垣禎一総裁と公明党の山口那津男代表だ。ところが、今度は〈近いうち〉の解釈をめぐって、にぎやかである。野田さんも、いろいろ懸案を並べて、
「なぜ解散・総選挙を先にやれというのか」(八月二十七日)と言いだす始末で、食い逃げの様相を見せているのだ。国会の会期末(九月八日)の解散を要求してきた自公両党は、約束を破られたとして、参院に首相問責決議案を提出(八月二十九日)、民自公三党は協調から一転全面対決になった。
政界では、手を握ったり喧嘩をしたりはありがちなこと、と言えばそれまでだが、今回は消費増税という難法案、しかも、野田さんが、
「命を懸ける」と何度も繰り返したあげくの約束ごとだ。政党間の信義が守られなければ、話にならない。〈近いうち〉の期限がいつかは、なにしろあいまいな日本語なので、だれにも判定できないが、まあ、常識の線はある。〈年内〉が限度とみるべきだろう。年越しは許されないが、とりあえず、国会会期末の解散はなくなった。
◇自民・維新の連立政権? 無理は迷惑をかける
ここで、はっきりしていることが一つある。民主党議員は例外なく、解散を一日でも先に延ばしたい。それは、本誌九月二日号の次期衆院選獲得議席予測でも明らかで、三人の選挙プロの予測平均値は、民主94(現有248)、自民181(118)、大阪維新の会103(0)……となっている。民主は現有議席の四割以下の大惨敗で、第三党に転落する運命なのだ。あくまでも予測だが。
そんな日は民主党も迎えたくない。政権を失い、野田さんは首相、代表の地位も去らなければならないのだから、気持ちはわかる。とはいえ、〈近いうち〉は無視できないジレンマのなかにある。問責騒動で〈近いうち〉は白紙という説も流れているが、それはない。
ところで、国会を閉じると、もう目の前に民主党代表選の告示(九月十日、投開票二十一日)、ついで自民党総裁選の告示(同十四日、投開票二十六日の予定)が迫っている。この両党首選が重要なのは、新党首が〈選挙の顔〉になると同時に、自民党の新総裁は野田さんのあとの首相に就く可能性が極めて高い。さきの本誌予測でも、自民は比較第一党が確定的で、選挙後は自民中心の連立政権になりそうだからだ。
しかし、党首選がまた面白くない。民主党は野田さん(五十五歳)の再選で決まりだろう。この一年、内外のことを無難にこなしたうえに、消費増税法という大法案を処理するのに成功した。人気はないが、及第点だ。有力対抗馬は出そうになく、一部に田中真紀子元外相(六十八歳)を担ぐ動きがあるが、世間には通用しない。だが、無競争というのも張り合いがなく、党のイメージダウンになる。
さて、自民党だ。いまのところ、予想候補が七人、甲乙つけがたいから年齢順に並べると、谷垣禎一総裁(六十七歳)、町村信孝元官房長官(六十七歳)、安倍晋三元首相(五十七歳)、石原伸晃幹事長(五十五歳)、石破茂前政調会長(五十五歳)、林芳正政調会長代理(五十一歳)、河野太郎元法務副大臣(四十九歳)である。
もう告示の半月前だから、通常ならAかB、あるいはA、B、Cの三つどもえ戦ぐらいに絞られてくるものだが、今回は見当もつかない。まだ推薦議員(二十人)集めに懸命の候補もいるはずだから、最終的に何人になるか。
選挙後の政権の枠組みも気になるところで、谷垣さんは自民・民主・公明の三党連立論、安倍さんは維新との連携に意欲を見せている。だが、自民・維新の連立政権は私にはイメージできない。いかに橋下徹代表(大阪市長)が人気者であっても、現時点で議席ゼロの地域政党が突然政府の中枢に入ってくるのには無理がある。
十九年前、やはり突然旗揚げした日本新党の細川護熙さんが一回の衆院選だけでそのまま首相就任というケースがあった。93年型といわれる。しかし、いま振り返ると無理があったのだろう、八カ月でつぶれた。無理は迷惑をかけるし、政治は人気だけではない。
とにかく、指導者を選ぶ党首選は国民が喝采できるような舞台にしてほしい。
<今週のひと言>
大使車の日の丸奪われたら、野田さん以下もっと怒れ。言葉が弱い。(サンデー毎日)
杜父魚文庫

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