10458 「成恵琳か、高英姫か」 李雪珠氏の未来は?  古沢襄

北朝鮮情報は、やはり韓国の情報筋が一頭地抜いている。玉石混淆で情報の正確度は必ずしも一定ではないが、地続きである利点から様々な情報が出てくる。すべてを信じるわけにはいかないが、やはり無視するわけにはいかない。
朝鮮日報が金正恩夫人の李雪珠(リ・ソルジュ)氏について、その未来は「成恵琳か、高英姫か」というユニークな論評をしている。将来、権力層が“親李雪珠派”と“反李雪珠派”に割れ、内部で反目や摩擦が大きくなりかねないというのは、興味ある指摘だ。
<金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党第1書記の夫人、李雪珠(リ・ソルジュ)氏が北朝鮮の「ファーストレディー」として公の席に姿を現しているが、自分の立場を固めなければという切迫感が少なからずあるのではないか、と韓国側では見ている。北朝鮮に詳しい消息筋は「自分がいつ成恵琳(ソン・ヘリム)氏のように見捨てられるか分からない、という不安があるはず」と語った。
元女優の成恵琳氏は、1960年代末から金正日(キム・ジョンイル)総書記と同居し、長男・正男(ジョンナム)氏を出産した。本来は韓国から北朝鮮に渡った文人・李箕永(イ・ギヨン)氏の妻だったが、一目ぼれした金総書記が横取り同然の形で自分の妻にした。しかし、金総書記の妹・敬姫(ギョンヒ)氏(現在は朝鮮労働党組織指導部書記)に追い出された1973年から、急激に健康状態が悪化した。西側に脱出した姉・恵琅(ヘラン)氏は恵琳氏について「子どもを奪われるかもしれないという不安から、健康状態が悪化した」と語った。
こうした状況の中、金総書記は79年から正恩氏の実母で在日朝鮮人出身の高英姫(コ・ヨンヒ)氏と同居し始め、成恵琳氏は事実上見捨てられた。うつ病に苦しんでいた成恵琳氏は海外を転々とし、2002年にモスクワで死亡した。
これに対し高英姫氏は、正恩氏のほかにも正哲(ジョンチョル)氏、汝貞(ヨジョン)氏の2男1女をもうけ、04年に死亡するまでファーストレディーの地位にあった。正男氏が01年5月に日本に密入国し後継構図から締め出されたことで、高英姫氏の立場はさらに堅固なものとなった。党組織指導部第1副部長を務めた李済剛(リ・ジェガン)、リ・ヨンチョル両氏など朝鮮労働党の実力者たちも、事実上「高英姫部隊」を形成した。
北朝鮮に詳しい消息筋は「李雪珠氏が、事情を知るほど不安に襲われ、もし金第1書記に影響力を行使して特定の事案に介入を試みるようになれば、権力層が“親李雪珠派”と“反李雪珠派”に割れ、内部で反目や摩擦が大きくなりかねない」と語った。
元幹部の脱北者A氏は「金日成(キム・イルソン)国家主席の後妻だった金聖愛(キム・ソンエ)氏も派閥を作り、金総書記と一時激しい権力闘争を行ったため、大きな混乱が生じた。李雪珠氏の存在自体が、北朝鮮の体制の潜在的不安要素」と語った。(朝鮮日報)>
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