オバマ大統領のルーツに光をあて、そのイデオロギーを探る映画がいまアメリカでヒットしています。そのレポートの続きです。これが最終部分です。
<<オバマの「謎」に迫った映画が大ヒット>>
<米国の主導権が失われていくと警告>
デスーザ氏はこの映画でさらに「オバマ氏は、米国が世界で主導権を発揮することには反対であり、イギリスなど従来の同盟相手の先進工業国との絆よりも、第三世界と称される植民地主義の被害を受けた諸国との関係改善を重視する」とも述べていた。
そうなると、日本との絆も特に重視はしない、という診断 も浮かんでくる。さらにはデスーザ氏は映画の中で「米国の一方的な軍備削減、核兵器削減もオバマ氏の真のイデオロギーの例証だ」とも語る。
確かにオバマ大統領は国際社会で、米国が特別の主導権を発揮して諸国家の先頭に立ち、民主主義や個人の自由という米国の伝統的な価値観を広めていくという「アメリカの例外主義」には背を向けてきた。「アメリカの例外主義があるならば、イギリスの例外主義やギリシャの例外主義があるだろう」とも述べているのだ。
米国の歴代大統領はみな程度の差こそあれ、米国が世界では特別な主導権を持つという「例外主義」の前提を受け入れてきたのである。
しかしオバマ大統領の核兵器の一方的な削減というのも米国の軍事力の相対的な縮小となり、主導的な立場からの後退となる。だからこの映画の総括は、もしオバマ大統領が再選を果たし、2016年まで統治を続ければ、米国の世界での比重も役割も相対的にすっかり縮まってしまう、という警告となってい る。
デスーザ氏はいまはニューヨークのキングズ大学の学長だが、共和党保守派とも近く、レーガン政権の国内政策スタッフだった経歴もある。いわゆる保守の論客とされてきた。このためこの映画も民主党側からは「反オバマ映画」と見なされている。ニューヨーク・タイムズなど民主党寄りの大手メディアもこの映画については無視か、あるいは「反オバマのプロパガンダ」という扱いしかしていない。
しかしこの作品は映画としては全米各地での観客動員数では明らかに大成功である。「政治ドキュメンタリー映画としては前例のないほどの人気を集め、ハリウッドを驚かしている」(ウォールストリート・ジャーナル紙)とも評された。
この意外な人気の背景には、明らかにオバマ大統領についてもっと知りたいという米国民多数の探索の姿勢があると言える。前回の大統領選挙ではオバ マ氏とケニアやインドネシアとの特殊なつながり、さらには過激派のエアーズ氏やデービス氏らとの緊密な絆が一部で指摘されながら真相不明のまま終わったことが大きな要因になっているわけだ。
オバマ大統領の暗渠とか謎と見なされる部分への米国民の多くの探究心が、この映画への人気を高めたとも言えるだろう。(完)
杜父魚文庫
10493 オバマ再選だとアメリカが縮小する 古森義久

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