薄煕来支持の保守派と腐れ縁の周永康グループが反日暴動背後に暗躍。毛沢東の肖像画を隠れ蓑に保守セクトが秘かに糾合し胡錦涛を窮地に追い込んだ。
九月十五から十八日にかけての「反日狼藉」は、日本のマスコミ史上では「天安門事件以前」「以後」とわかれたように「反日暴動以前」「以後」に峻別されることになるだろう。日本企業の中国進出のリスクが問われる。中国旅行の安否も問われる。中国そのものへの疑念も生まれた
ところで十七日までの各地での「反日暴動」は、各派がそれぞれ所定の目的をなした。すくなくとも保守派(この場合は毛沢東郷愁セクトとでも名付けよう)にとっては胡錦涛への牽制という政治目的が大きく達成された。
青島と西安、長沙における日系百貨店、スーパーを襲撃し、強奪をやらかして治安を一挙に悪化させれば、赤恥を掻くのは胡錦涛執行部である。
かれらは毛沢東の肖像を掲げることで糾合の合図を謀った節があり、警察と組んで、放火、狼藉、暴動の切っ掛けをつくった。パナソニック、ミツミ電機などの放火は「プロの仕業」と目撃者が語っているように。
警察方面と宣伝を牛耳るのは保守派、とりわけ上海派系の周永康の残党らで、かれらは謀略にかけてのプロである。(ついで言えば、容疑者拘束と中国が言っているが、内容は不確か、氏名、写真の公表もない。おそらくパトカーを焼き討ちしたり、党委員会庁舎の破壊に加わった不満分子を拘束しているだけだろう)。
さて損害賠償に関して中国当局は「それは日本に責任がある」と真っ向から逃げる構え、他方、北京の秀水市場には「日貨排斥」の大きな垂れ幕がかかった。
これは近未来の事態を示唆しているのではないか。
▼秀水市場の壁面全部が「日貨排斥」の広告になった
秀水市場と言えばガイドブックにも紹介されて世界的に有名なスポットである。
ルイビュトン、グッチ、アルマーニなど世界のブランド品のニセモノを売る巨大デパートであり、その売り子の暴力的販売は顰蹙を買っているが、WTO違反、特許違反と非難してやまないアメリカ人が一番多く買い物にくる。日本人もチラホラ目に付くが、欧米人が圧倒的。もともと日本商品は殆ど扱っておらず、秀水が日貨排斥と言ったところで99%被害がない。あれは政治宣伝の場を貸して世界にアピールしているのである。
したがって問題は、秀水市場のことではない。
反日デモの多くのプラカードに「日貨排斥」が登場したことが、両国関係の今後を暗示する。嘗ての「五四運動」も日貨排斥が巨大スローガンだったが、背景には欧米キリスト教会が資金を援助した。その後、コミンテルンに替わったが、共通のスローガンは欧米の利害と一致した。
1972年からタイ、インドネシアで始まった日課排斥は、背後に華僑グループが居た。
NY、ワシントン、サンフランシスコで展開された反日デモも背景は中国の秘密資金で動くプロの主催である。顔ぶれはいつも同じである。かれらが日貨排斥を口にしなかったのは、米国市場では意味がないからである。
ならば今回の反日デモに前後して呼びかけられている「日貨排斥」で最終的に裨益するのは誰か? 中国のメーカーやライバル? 中国の消費者は自国製の自動車さえ買わず、BYDは売り上げが数百台、経営危機に陥っている。
こんかいの日貨排斥とて日本にとってそれほどの損害はないだろう。つまり日本製品が必要なのは中国であって、小松のクレーンも、IHIや三菱の建機、重機もなければ困るのは中国のメーカーやデベロッパーであり、それならば対抗上、日本でも「華貨排斥」が起きれば、これも究極的に困るのは中国であって、日本が困るのは割り箸と備中炭くらいである。
まさにウォールストリートジャーナルが皮肉ったように「かれらは日本車を破壊して、日本車を買っている」(17日付け中文版)。
100円ショップが困る? すでに雑貨工場は中国からバングラ、インドネシア、スリランカなどに移転しています。
▼中国がもっとも恐れる嫌な事態とはなにか?
それよりも、中国が一番日本にして欲しくないことは何か?
修学旅行の目的地が軒並み韓国中国から台湾へ? 中国へのツアーの激減?そういう現象的な事例はともかくとして、中国がもっとも望まないことは、覇権拡大という戦略が静かにしかし着実に日本によって妨害されることであり、軍事的には日本の武装強化、南西諸島への自衛隊基地建設などである。
けれども、もっとも効果的な措置とは中国の国債購入をやめること。通貨スワップを凍結することに尽きる。
昨今、中国の経済戦略とはIMF世銀に幹部を送り込んで地ならしをはじめたように、人民元の国際カレンシー入りという野望のみならず、通貨覇権の地域拡大である。
通貨とは経済の主権行為である。通貨の使用が及ぶ範囲が中国の経済覇権の影響拡大ということであり、世界覇権を目ざす中国は日本を巻き込む勢いで日本円と人民元の直接取引を拡大しようと躍起であり、また米国が(公式的に不満は漏らさないが)、もっとも気にかけているポイントなのである。
日本は静かに中国の野望をくじく方法を思考すべきである。
杜父魚文庫
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