中国の反日の分析を続けます。
<<中国共産党がある限り日中関係は変わらない 政権の基盤は「反日」と一体化したナショナリズム>>
だが、水道の水となる日本への負の感情は汲めどもつきないほど、中国社会には満ち満ちている。中国共産党の長年の反日教育がその素地を固めているのだ。
中国当局とすれば、日本側に尖閣問題での譲歩をさせるため、そして中国側では反日の表明で愛国心と共産党政権支持を強くするため、大規模な反日デモの広がりも、効用があることになる。
<植え付けられた「犠牲者意識からの日本への憎しみ」>
こうした中国での反日の構図を、米国の中国研究学者がナショナリズムの観点から分析した論文を発表しているのが面白かった。その観点を踏まえる と、いまの反日の動きの全体像がさらに立体的に透けて見えてくる。確かにナショナリズムの要因はいまの中国での反日の流れの象徴的な現実の一端だと言え る。
この論文は「ニューヨーク・タイムズ」への先月の寄稿だった。筆者はオクラハマ大学の米中問題研究所所長のピーター・グリース教授である。
グリース教授は少年時代を中国で過ごし、1999年にカリフォルニア大学で博士号を取得して、オハイオ大学、コロラド大学を経て2006年からオクラホマ大学に勤めている。まだ40歳前後の気鋭の中国研究学者である。寄稿論文は「なぜ中国は日本に、そして米国にも憤慨するのか」と題されていた。
同論文によれば、今回の反日デモはナショナリズム的なイデオロギーが起源だという。いまのデモ参加者たちの日本への反感は真実であり、その原因は結局は中国当局による過去の「犠牲者意識からの日本への憎しみ」なのだという。
中国共産党は自国民への特定の歴史教育により、特に日本への憎しみを育てることに努めてきたが、その基盤はナショナリズムをあおるプロパガンダだったというのである。
一般にナショナリズムという言葉は日本語では国家主義、国粋主義、民族主義などと訳されるが、この中国の場合、漢民族の特殊の自己認識が基礎となるため、民族主義と訳すのが最適かもしれない。
いずれにせよ、中国共産党は自国民に日本については日清戦争での屈辱的な敗北から日中戦争での後退、南京での事件など日本のネガティブな部分だけを教えて、道義的かつ憎悪の次元でのナショナリズムとしての日本への負の感情を植えつけるのだ、とも述べている。
グリース氏のこの論文は、次のようにも述べていた。(つづく)
杜父魚文庫
10543 反日デモは人工「日本憎悪」 古森義久

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