同じ外国通信社でもイギリスのロイターは、中国の反日暴動が日中経済に及ぼす影響の方に関心がある。この事件に関する政治・軍事的背景の解説は、平板的で深みがない。
BSのヨーロッパやアメリカの海外ニュースを見ていても大規模な反日デモを報道していないという海外邦人の声もある。宮崎正弘さんに言わせると「欧米が反日を報じないのは、それどころではないからで、イスラムのテロが吹き荒れていますから・・・」ということになる。
欧米からみるとアジアの一角で吹き荒れる反日暴動は、対岸の火事なのかもしれない。ロイターの関心も事件が日中間の経済摩擦だけで終わるのか、アジア経済全体に影響が及ぶのかの視点でみているのだろう。
[北京/東京 18日 ロイター]満州事変の発端となった柳条湖事件から81年を迎えた18日、中国各地では日本政府による尖閣諸島(中国名:釣魚島)の国有化に抗議する反日デモが続いた。日本人の活動家2人による尖閣諸島への上陸も確認され、両国関係がさらに悪化する可能性も懸念されている。
北京の日本大使館前で行われた反日行動には数千人が参加。デモ隊の一部が建物に向かってペットボトルを投げたほか、中国国旗を掲げ、反日スローガンを叫ぶなどした。警官隊は6つの列を作り厳重な警戒態勢を敷いたが、日本外務省によると、大使館の一部で窓が割られたという。デモは上海や四川省成都、広東省深センなど各地でも行われた。
海上保安庁は18日、日本人2人が尖閣諸島の魚釣島に上陸したのを確認。尖閣諸島では日本と中国が監視活動を行っており、両国が衝突する可能性が懸念も生じている。
中国外務省の洪磊報道官は声明で、日本人2人の上陸が中国の領土主権を侵す深刻な挑発的行為との見解を示した。上陸について日本側に抗議したとし「対立を激化させるすべての行動を停止させるため、効果的措置を講じるよう日本に要請する。同時に、中国はさらなる行動を起こす権利を有する」とした。
中国と日本のメディアによると、東シナ海での休漁期間終了に伴い、浙江省などから漁船約1000隻が尖閣諸島付近の海域に向かっている。
中国を訪問しているパネッタ米国防長官は、日中の領有権をめぐる問題について、自制した対応を求めた。同長官は北京で記者団に対し、「現在の緊張状態について、全ての関係者が冷静で自制した対応を取ることを求める。この論争を外交的、平和的に解決するための対話の場を維持するよう要請する」と述べた。
中国の梁光烈国防相は、尖閣諸島の領有権をめぐる問題について、平和的解決を望むと述べたが、一段の措置を講じる権利は有するとの見解を示した。
今回の反日デモは、1972年の日中国交正常化以来の最大規模に発展。中国各地では日本の有名企業も暴力行為の標的となっており、工場の操業停止や店舗の臨時休業に追い込まれる事態となっている。
これまでにトヨタ自動車(7203.T: 株価, ニュース, レポート)、ホンダ(7267.T: 株価, ニュース, レポート)などの自動車メーカーが中国の一部工場の操業を停止。このほかマツダ(7261.T: 株価, ニュース, レポート)、三菱自動車工業(7211.T: 株価, ニュース, レポート)、パナソニック(6752.T: 株価, ニュース, レポート)、ユニクロを展開するファーストリテイリング(9983.T: 株価, ニュース, レポート)なども一部の工場の操業停止や店舗休業の措置を取った。
パナソニックやミツミ電機(6767.T: 株価, ニュース, レポート)の工場では生産設備の一部が、3店舗を展開する平和堂(8276.T: 株価, ニュース, レポート)ではガラスやシャッターが壊された。
日立建機(6305.T: 株価, ニュース, レポート)は反日デモ拡大を受け、山東省青島にある直営代理店に勤める日本人従業員2人を同日帰国させることを決めた。15日にはすでに、安徽省合肥市にある油圧ショベル工場の日本人従業員23人全員を帰国させた。
格付け会社フィッチ・レーティングスは、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化が加速し、長期化した場合、日本の主要自動車メーカーやハイテク企業の格付けが脅かされる可能性があると予想している。
東京株式市場で日経平均は4日ぶり反落。中国での反日デモの拡大が重しとなり、小売ではイオン(8267.T: 株価, ニュース, レポート)が年初来安値を付けたほか、中国生産比率が高い日産自動車(7201.T: 株価, ニュース, レポート)など主力輸出株の一角が軟調となった。東洋証券・情報部長の大塚竜太氏は、「円安が下支えする一方、中国関連株が重しとなっている。問題が長期化すれば日本企業への悪影響は避けられない」と指摘した。
反日デモ問題は日本株だけでなく、中国株の売り要因にもなっている。18日の上海総合指数.SSECは0.91%安となり、上向き始めていた中国株は再び下落基調を強めている。(ロイター)>
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