王洋(広東省書記)の政治局常務委員会入り、依然微妙。民衆からは温家宝首相の一時の人気を越えて、王洋への期待が高まった。知識人、学生は王洋の次期執行部入りを望んでいる。
しかし民衆レベルの期待と中央の政治高層の認識は、いつものように百八十度異なる。学生、知識人から評価された趙紫陽があっけなく失脚したように。胡耀邦があれほど学生の人気を獲得しながら、守旧派、保守派、長老たちから反撃され失脚したように。
王洋は政治改革を唱えているが漸進的で、党内改革が主柱である。しかし漸進改革は生ぬるいという批判もあって「温水煮青蛙」だと王洋が喩えられる。水温をもっと高くしなければ、実務政治家としての王洋の飛躍はない、というわけだ。
一方、温家宝のそれは「主張するだけ」、西側の民主主義システムを賞賛するかのように、きわめて抽象的な言葉の羅列で、彼自身の実践は伴わない。だから温家宝は「言うだけ番長」。
さて春先から夏までの下馬評では王洋が次期政治局常務委員会入りは確実と言われた。
広東省の経済繁栄をバックに、発言力を増し、陸豊市鳥炊村でおきた暴動の処理を村の党幹部更迭と民主選挙で乗り切った二月頃が、王洋のポピュリズムの頂点。北京では長老や保守派がいやな顔つきだったという。
二月、王立軍事件が発生し、四月に重慶書記の薄煕来が失脚した。
この政変では「団派の勝利」と言われた。ところが薄残党が毛沢東主義イデオロギー重視セクトや貧困層と結合し、背後で陰湿な「紅歌」キャンペーンを開始する。
要するに重慶市の前任者だった王洋と薄煕来とが「政治ライバル」であるというバランス物語が作られ、「薄が失脚なら、絶対に王洋の政治局常務委員会入りを阻止する」という流れが形成されたのだ。
したがって王洋は保守派、上海派から目の敵とされる。
胡錦涛は次期政治局常務委員会の人選でむろんのこと、王洋を強く支持しているが、現段階では依然として微妙である。
一部の北京筋は第十八回党大会の日程は十月十三日から十八日としている。
杜父魚文庫
10557 党大会は10月13日から18日と北京消息筋 宮崎正弘

コメント