中国の「反日」のアメリカ側による分析を続けます。中国のナショナリズム研究のアメリカ人学者の見解紹介です。反日のデモも暴動も中国共産党の政治の道具にすぎないという趣旨です。
<<中国共産党がある限り日中関係は変わらない 政権の基盤は「反日」と一体化したナショナリズム>>
「中国の対日政策形成では、不運なことにナショナリズムが主要因の1つとなってしまった。これは日中両国にとっても、北東アジアの平和や安定に とっても好ましくない。1990年代までは、中国では日本に対する歴史認識でも『中国共産党の指導で日本の帝国主義者を打破した』という態度で、中国側の 勝利やヒロイズムの強調が主だった。
ところが95年ごろから愛国主義教育の開始の下、中国側の歴史教科書の書き換え、第2次大戦の新しい解釈、南京虐殺の 新議論などにより、対日認識も変わってきた。日本は中国文化の長年の受益者なのに恩義を忘れ、日清戦争で中国を破り、その後も侵略を続けたという歴史解釈 が広められた。日本側の残虐性や不公正が宣伝され、一般中国人の怒りをあおり、現代の中国側の反日感情の基盤となっていった。この感情は永続性が強い。こ うした点では中国側の対日感情は他の外国に対する感情とは非常に異なるのだ」
──中国当局が自国民の反日感情を強め、それを対日政策での道具にもするということか。
「中国当局は確かに国民の反日感情を日本との外交やビジネスに利用することも多い。歴史カードにもよく使う。だが反日感情は上からだけでなく、国 民一般という意味の下からボトムアップの形で盛り上がった部分もある。南京虐殺の記念館建設は地元住民の要求が多かったともいう。だから国民の反日感情が 政府に本来、望んだよりも強硬 な対日姿勢をとらせることもある。2005年春の反日デモの際もそうだった」
──中国共産党の統治の正当性を示すために自国民に日本への厳しい態度を保たせるという指摘もあるが。
「わが党こそが日本の軍国主義勢力を倒し中国を解放したが、日本はまた軍国主義を復活させる恐れがあり、わが党の統治が続かねばならないという 『正当性』と言えるかもしれない。ただ反日感情には党の思惑どおりにならない部分もある。小泉政権時代、中国当局が小泉純一郎首相へのひどい非難を広め、国民一般が それでさらにひどい小泉観を抱き、今度はその一般の激しい悪感情のため指導者が小泉首相と会談したくてもできなくなってしまったのはその実例だ」
──日中関係のいまの状況をどう見るか
「表面では確かに改善されたように見える。しかし、基本はあまり変わっていないと思う。過去数年に起きた民間レベルのちょっとした衝突がまた起きれば、中国側で反日デモが起きても不思議ではない」
上記の「日中関係のいまの状況」とは2008年7月の時点での状況を指す。その4年後の現在、中国で反日デモが盛り上がっているのだ。この点での グリース氏の予測はぴたりと当たったことになる。そしていまの中国での反日はナショナリズムの発露として中国共産党政権の存続に必要な活力剤となっている ということだろう。(つづく)
杜父魚文庫
10559 中国の「反日」は独裁政権の維持のため 古森義久

コメント