さて、事実上、次期首相を選ぶといわれる自民党総裁選の投開票日まであとわずかとなりました。まあ、あまり予断を持って論じるわけにはいきませんが、だいたいの趨勢を見ると、序盤は有力と言われた石原伸晃幹事長が失速し、その分、他候補が票を上積みしているというところでしょうか。
私も本当は、あちこちの現場に飛んで取材したいのですが、いたずらに馬齢を重ねるといろいろな雑用ばかり増え、現場の生の空気を実感できる場面が減っていきます。というわけで、総裁選の候補者遊説に同行した若手記者(というほど若くもありませんが)のメモから、有権者(自民党支持者?)の雰囲気が伝わる部分を抜き書きしました。
あくまで、各記者がそこで感じたというだけで、それが実際にそうだったかまでは分かりませんが、現場だからこそ分かることもあるでしょうから、何かの参考にはなると思います。少なくとも、テレビで偉そうに解説している年配者より、よほど素直に物事を受け止めていることでしょう。
■23日
・激しい雨だが、駅北口ロータリーは黒山の人だかり。石破氏が傘も差さず、ずぶぬれで演説。安倍氏への声援が一番多く、日章旗片手に「安倍さーん」という若い声も。石破氏もまあまあ。石原氏は演者で唯一、演説始めの拍手なし。(千葉県のJR市川駅前)
・笑顔で甲府駅から出てきた4人は握手攻めと拍手。人気は安倍氏、石破氏、石原氏、林氏の順か。(JR甲府駅前)
■22日
・演説中の聴衆の状況(携帯などのカメラで撮影するかどうか)や演説後の聴衆反応を見ていると、石破、安倍両氏の反応が良い。(福島市内)・安倍氏の拍手、掛け声が多い。(仙台市内)
■21日
・声援は安倍、石原両氏が多し。演説前の幟は石原、石破両氏のみ。パンフを積極的に配っているのは安倍、石破両氏。(那覇市内)
■18日
・小雨が降り続き、見物人も動員と見られる人ばかりで限定的。石破氏のパネルを掲げている人が目立ったくらい。安倍氏のチラシを配布している人もいた。演説は相変わらず、テンションが高い安倍氏への拍手、かけ声が多い。(神戸市内)
■17日
・石原氏を応援する大きな看板(西部警察とか書いてある)を持った人たちがうろうろしていた。あと「安倍さん」と書かれた小さなプラカードを持っている人も。歓声は安倍氏に対するものが一番大きかった。(大阪市内) ・直前までの雨は上がったものの、台風16号の影響で風が強い。演説では安倍氏が一番威勢がよく、拍手やかけ声も多かった。石原氏の失言はなし。(名古屋市内)
■16日
・声援の大きさはあまり変わらず。強いていえば、石破、安倍両氏がやや大きめ。握手の数から見ると、石破氏優位。石原氏は最後近づいてきた中年女性に「エイリアンじゃないよ」と嫌味を言われる。石原氏は無視。(JR長野駅前)
……後輩記者の街頭演説メモは当然、これだけではありませんが、聴衆が各候補にどういう反応を示しているのか、記者が何に留意しているのかが分かりやすいものを選んで紹介しました。まあ、だからどうだというほどのものではありませんが。
で、一方の民主党はというと、代表戦で再選を果たした野田佳彦首相は幹事長に「あの人」を続投させるようですね。民主党に人材がいないことは重々、もう勘弁してくれというほど分かってはいますが、それでもねえ。
野田氏が昨年8月前に「あの人」を選んだ後、何かうまくいったことが一つでもあるのかと心から疑問なのですが、もう理解しようと試みる気も起きません。
誰が総裁になるにしろ、自民党はもし再び政権に就くことがあるならば、そのときこそ昔のしがらみなどと縁を切り、日教組・自治労と今度こそ本気で対峙してもらいたい。これをなあなあにするようでは、いくらあの、例の、いわく言い難い、目を背けたくなる、というかとても正視できない恥ずかしい民主党よりかはいくらかマシであっても、本質はたいして変わらないという評価を下さざるを得ません。
先のことは分かりませんし、私は有権者の心理、気持ちを読み取る能力に欠けているようですが、そんなかつての自民党がただ復権するだけであったら、もう時代が必要としていないと思う次第です。なあなあも、なれ合いも55年体制下には一定の意味があったのかもしれませんが、もう結構です。
杜父魚文庫
10578 自民党総裁選の街頭演説雑感その他 阿比留瑠比

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