鴻海精密は「それどころじゃなくなった」。富士康の山西省太源工場の暴動は軍隊式経営への不満が原因だった。
毎日、従業員の出入りがあって正確な人数を誰も掴んでいない。毎月二万人が辞め、二万人が新しくリクルートされる。まるで富士康(台湾「鴻海精密工業」の中国子会社)の人事部や大都市のハローワーク風。
苛酷な労働を強いられ、一日10時間から11時間働かされるが、約束された「残業」労賃も、なんだかんだと理由をつけて削られるという。
ほぼ全員が会社の寮に入る。消灯時間を守らなければ地下室に呼ばれて査問されたり、夜のトランプ博打も御法度、まるで軍隊のスパルタ訓練だと若い従業員は不満を鬱積させてきた。
大乱闘事件がおきた富士康の太源工場はアイフォンの部品を作っているが、悪名高い軍隊方式の経営だった。この工場だけで79000人もの従業員がいる。
乱闘は酔っぱらった従業員を警備員が殴ったことから始まったようで、たちまち二千人が乱闘に加わり、40名が負傷した。
あまりのことに郭台銘社長は「閉鎖、撤退」と口にした。これは従業員への脅しだった。
結局、乱闘がおさまるまでに警察官5000人が動員された。アイフォンの部品供給に不安感が拡がった。同社はほかにヒューレットパッカードのパソコン部品や、デルのコンピュータ部品製造で有名である。
富士康は中国全土に54万人がいるとされ、太原の79000人規模は「それほど大きくない」。深セン工場は12万人が勤務しているという。ましてマネジャークラスは深センと鄭州からやってきた。
10時間を越える労働、入社時の給与体系と異なり、まして何時ほかの勤務地へ移動になるかも分からない。安定性が保証されていない。
とくに軍隊方式の管理に若い世代が耐えられない。世の中が変わっているので、警備員との悶着は四六時おきる。なにしろ二年前に深セン工場では連続的に13人が飛び降り自殺を図り、12名が死亡、工場はすべてに金網が張られて、まるで奴隷収容所となった。
世界に悪名をとどろかせた、この富士康、親会社が台湾の鴻海精密工業。そして、鴻海の勢いに、落ち目のシャープが株式購入を打診してきた。
シャープは、鴻海の傘下に入るかと言われたが、株価急落で鴻海が条件を変え、その話は白紙に戻った状況である。
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読者の声 どくしゃのこえ READER‘S OPINIONS 読者之声
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(読者の声)今日9月27日は日中国交回復四十周年、一昨日ニューオータニで行われた中国大使館主催のパーティは、これほど日本が侮辱されている政治環境のなかで、1200名もの日本人が参加したとニュースで知って驚き且つ呆れました。
なぜ、この宴会をボイコットしなかったのか。経団連会長やら某某大手企業の社長連中はまるで中共の脅威と脅迫を前にして、揉み手をしてご機嫌をとっているみたいで不愉快千万、そう思った日本人は意外に多いのではと思います。(HI生、板橋区)
(宮崎正弘のコメント)しかし、鳩山さんが北京へ招待されても、さすが、かれほどのバカでも行きませんでしたね。劉暁波がノーベル平和賞を貰ったとき、中国は突如、「孔子賞」をつくり、第一回受賞者に台湾国民党名誉主席の連戦を選んだ。さすがの連戦も、こうまでバカにされては、授賞式を欠席したことがありましっけ。
杜父魚文庫
10598 シャープ買収は白紙に戻るか? 宮崎正弘

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