10620 「日貨排斥運動」が不況に追い打ち  宮崎正弘

広東は構造不況、上海はITバブル、北京は「反日不況」。中国全土まだら模様で景気後退、日貨排斥運動が不況に追い打ち
広州の南に拡がる東莞は日本企業、台湾企業の進出が多かった。繊維、部品産業が加工し始めても、まだ自動車関連部品が活況だった。
広州の番兎は本田が最初に進出し、周辺にトヨタ、日産も工場を建てた。この番兎にも閑古鳥が鳴き始め、付近の高級マンションがぼつぼつと空き家が目立つようになったのは三年ほど前からだが、2012年は依然と決定的に異なる。
アパレルは輸出が半減以下となり、工場は軒並み従業員を三分の二解雇した(ウォールストリートジャーナル、10月2日)。日本企業のあちこちでストライキ、暴動がおきているのは賃上げばかりではなく解雇への不安からだろう。
他方、レノボがパソコン工場を米国に建設すると発表した。ノースカロライナ州で最初は数百万ドルの投資から開始し、パソコンを製造するのも、ついに中国の人件費と輸送費を勘案した場合、米国内に陸揚げ後の税金、乙仲費用、トラック、倉庫コストなどを加えると、米国で生産したほうが安上がりという判断だろう。
また上海、北京、広州、青島では日本人相手のレストラン、パブ、ナイトクラブ、カラオケに客が激減し、営々不振、倒産も目立ち始めた。
この激減ぶりは2011年3月の東日本大震災直後の不況よりも深刻で、とくに日本人の宿泊が多いホテルはガラガラという。
他方、黒竜江省、内蒙古自治区、甘粛省など反日暴動の組織されなかった地域は、周回遅れのプロジェクトバブルがはじまって景気は活況と伝えられている。
かくして広東は構造不況、上海はITバブル、北京は「反日不況」に陥ったが、中国全土は平均値はなく、まさに斑模様の景気後退と沸騰のミックス。しかし沿岸部は「日貨排斥運動」が不況に追い打ちをかけたようだ。 
杜父魚文庫

コメント

タイトルとURLをコピーしました