文豪アンドレ・ジイドが二度目のソ連旅行をして、ソ連型社会主義が共産官僚による政治主義に堕しているのを目の当たりにし、失望して帰国している。いまの中国がその状況にある。
市場経済を取り入れたというが、共産官僚には経済そのものが理解できていない。肥大化したバブル経済が続くと錯覚し、世界第二の経済大国なったと過信して、これを政治主義で律する過ちを冒そうとしている。
経済が”生きもの”であることを理解していない。
尖閣諸島が中国の領土だとする主張は、日本は認めることが出来ないが、中国側の言い分は言い分なのだろう。それを主張するのは勝手である。
だが、それを一歩進めて、対日経済制裁にまで歩を進めるならば、放った矢はブーメランのごとく必ず中国に戻ってくる。
中国経済は欧州経済危機の直撃を受けて貿易・投資が減少し、成長率が鈍化している。そこに対日経済制裁を発動すれば、経済が最悪の状態を招き、バブル崩壊の引き金になりかねない。政治主義に堕している中国の共産官僚には、それが理解できない。
日本が音をあげて中国にすり寄ってくると思っている。
藤村幸義・拓殖大学国際学部教授が、その辺りを詳しく解説している。さらには日本だけでなく欧米など海外から中国に流入していた巨額の投機資金が一気に流出し、バブル崩壊を引き起こすことを指摘した。この危険性が高まっている。
<尖閣諸島の国有化に反発する中国は、対日経済制裁の動きに出ているが、そうなれば日中間の貿易、投資など経済交流は大きく落ち込んでしまう。それでなくとも中国経済は、欧州経済危機の直撃を受けて貿易・投資が減少し、成長率が鈍化しているときだけに、対日経済制裁は最悪のタイミングである。
最も恐れるのは、日本だけでなく欧米など海外から中国に流入していた巨額の投機資金が一気に流出し、バブル崩壊を引き起こすことではなかろうか。
このほど発表された今年8月の経済指標をみると、10%を超える高度成長を誇っていた国かと見間違えるほどに悪い。前年同月比で、工業生産者出荷価格は3.5%減、輸入は2.6%減、外資利用実行額は1.43%減とマイナスの数字が並んでいる。社会電気使用量はわずかに3.6%の伸びだし、輸出も2.7%とかろうじてプラスである。
こうした中で、日本関連の数字はそれほど悪くはなかった。1~8月の外資利用実行額は全体ではマイナスでも、日本からは16.2%も増えていた。観光に至っては日本への中国旅行客が7月には20万人を突破、韓国を抜いてトップに躍り出ていた。
にもかかわらず、中国は対日経済制裁に動き出している。
2005年の上海、北京などでの反日デモでは、当時の薄煕来商務相が経済への波及を食い止める発言をしたが、今度は当局がむしろ制裁を促すかのような言い方をしている。
主要な税関当局では、日系企業による輸入品の通関検査を厳しくし始めた。日本への観光はほぼ全面的にストップ状態だ。日本との経済関係の悪化は、結果的に中国にとって最悪のタイミングとなりかねない。日中間の貿易、投資などの数字が落ち込めば、全体の数字をさらに悪くしてしまう。9月に入って約1兆元(約12兆4000億円)の景気刺激策を打ち出したが、そんなものは吹き飛んでしまいかねない。
さらに恐れるのは、これまで中国経済の高成長を見込んで流入していた欧米からの資金が流出し始めていることだ。
中国人民銀行発表による「外匯占款」(外貨保有ポジション。銀行が外貨を買い入れると同時に、国内市場に人民元を放出する金額のこと)は、この7月、8月も2カ月続けての減少である。このほか国際収支統計からも、「ホットマネー」の流出傾向を確認することができる。この勢いが加速すると、バブルが一気に崩壊しかねない。(産経)
杜父魚文庫
10634 対日制裁が招くバブル崩壊 欧米からの資金流出も 古澤襄

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