花巻市の石材店の社長の話。津波被害に襲われた被災者の間で、倒れた墓碑を起こしたり、新しい墓を建てる動きが出ているが、被災地の石材店には、その力がない。いきおい内陸部の石材店に注文が殺到している。
その仕事は一日では出来ない。墓を起こして、それで終わりというわけにはいかない。地震がきても倒れない、津波がきても倒れない作業というのは、専門家の石材店でもいろいろと工夫が必要だという。
最低でも二日がかりの仕事になる。ところが被災地には泊まる宿がないから、夜遅く引き返してきて、翌朝早く出掛けることになる。この手間を嫌う内陸部の石材店もあるそうだ。こんな事情は現地に来ないと分からない。
花巻温泉郷の宿の前にはパトカーがずらりと並んでいる。岩手ナンバーだけでない。大阪ナンバーや神戸ナンバーのパトカーも混じっている。
被災地の治安のために全国の警察がきているのだが、宿泊地がないことから、交代で内陸部の宿に泊まりにくる長期戦になっているそうだ。いきおい温泉郷の宿が繁盛する現象を招いている。
これも現地に来ないと分からない。ボランテイアの数が減っている。原因は泊まる宿がないからだ。
復興は遅々として進まない。まだまだ時間がかかる。だが救いは被災者たちの東北人らしいねばり強さ。
杜父魚文庫
10647 被災地に来ないと分からない話 古澤襄

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